雨降る中、私は桜の木の下でおじぞうさんを
眺める。もし神様と言う物が存在するなら
私の願いを聞いて欲しかった。
彼は音楽好きでよく楽曲を作っていた。
私はそれを聞いた時は嬉しかった。
私を買ったマスターは楽曲すらしない
ただのパソコンオタクだったから。
マスターから離れて、彼の所に居候。
そこで、彼と色々な曲を作り、演奏し、
歌い続けた。
時には近所の人に注意され、時には
歌が生まれない時があった。
時には歌以外の物に挑戦をしてみたりもした。
そんな毎日が私にとっては幸せだった。
何よりも、ボーカロイドの私と付き合って
くれたのが一番の喜びだった。
でも私は、何故ボーカロイドなのに
感情が生まれたのか。これって
神様の力なのかな・・・・。
しばらく、おじぞうさんの手の上に置いてある
黄色いキーホルダーを手に取る。そういえば
彼が私に買ってくれたのもキーホルダーだった。
田舎の小さな駄菓子屋に、小さなキーホルダーが
あった。値段は1200円。他のと比べると
一番高かったかも知れない。
そのキーホルダーは、田舎の女性達に人気が
あって、私自身もちょっと興味があった。
しかも、そのキーホルダーにはまじないがあるそうだ。
”彼氏に買ってもらうとその二人は永遠に別れない”
そんなまじないが値札の裏に書かれていた。
彼と駄菓子屋に行った時、彼はその事を知っていたのか、
真っ先にキーホルダーに手を伸ばす。
赤と緑のキーホルダー。色々は何種類かあったが、
この二つを彼は選んだ。
彼は私に赤いのをくれた。彼にこれを買った理由を聞くと、
”これ、恋のまじないがあるんでしょ?”
と言った。
その時のキーホルダーはまだ持っている。腰についている
チェーンの金具に付けている。一番のお気に入り。
私は彼と離れない。このまじないもあるから。
けど・・・・彼が死んでしまった。
彼に会いたい。彼と話したい。彼と・・・・暮らしたい。
そう思いながら、私は雨の中
自分のマスターの所に帰る・・・・。
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