法(さだめ)の黒(くろ)きを身(み)に纏(まと)いし
吾(わ)の逝(ゆ)くは誰(た)が為(ため)ぞ
人世(ひとよ)に堕(お)ちたれば
此(こ)の姿(すがた)も闇(やみ)に消(き)え尽(つ)く
嗚呼(ああ)
汚(けが)れ無(な)きは天(あま)の日(ひ)の照(て)らす
微(わず)かなる時(とき)ぞ
 
誠(まこと)の白(しろ)きを背(せ)に負(お)いたる
人(ひと)も逝(ゆ)く 誰(た)が為(ため)ぞ
露(つゆ)の乾(かわ)くが如(ごと)く
倏忽(たちまち)の間(ま)に儚(はかな)くも
嗚呼(ああ)
情(なさ)け無(な)きは天(あま)の日(ひ)の陰(かげ)る
確(たし)かなる法(さだめ)
 
嗚呼(ああ)
美(うつく)しきを留(とど)めよと
願(ねが)えばこそ
死(し)を恐(おそ)るる涙(なみだ)
啜(すす)るも満(み)たされざれ
此(こ)の夜(よ)の光(ひかり)を
吸(す)い尽(つ)くすまで
喉元(のどもと)の 爛(ただ)れんと欲(ほっ)するは何(なん)ぞ。
然(しか)し足(た)らぬ、足(た)らぬぞかし…
月(つき)に照(て)らされし 妾(わらわ)の姿(すがた)は、
鏡(かがみ)に映(うつ)りし 妾(わらわ)の姿(すがた)は、
…もはや 人(ひと)ではなし。
人(ひと)ではなし、鬼(おに)でもなし、蝦蟇(がま)。
唯(ただ)の、 唯(ただ)の醜き、 蝦蟇(がま)じゃ。
 
指(ゆび)の隙間(すきま)から零(こぼ)れ堕(お)ちたる
汁(しる)まで嘗(な)め尽(つ)くす
胸(むね)を張(は)り裂(さ)く如(ごと)く沁(し)み渡(わた)る
甘(あま)き果物(くだもの)
嗚呼(ああ)
夢(ゆめ)にまで見(み)たる永久(とわ)の命(いのち)
現(うつつ)にぞ成(な)りぬ
 
蝦蟇(がま)の醜(みにく)きぞ身(み)に纏(まと)いて
吾(わ)の生(い)くる 誰(た)が為(ため)ぞ
老(お)うも尚(な)お老(お)いず
死(し)も訪(おとず)れず 永久(とわ)に獣(けだもの)
嗚呼(ああ)
偽(いつわ)り無(な)き験(しるし)を此(こ)の身(み)に
悔(く)いを彼(か)の罪(つみ)に
 
嗚呼(ああ)
麗(うるは)しきぞ人(ひと)の滅(ほろ)びたる
咲(さ)きて散(ち)りゆく花(はな)も見(み)ず
生(い)き血(ち)を貪(むさぼ)る
此(こ)の世(よ)の全(すべ)てを
吸(す)い尽(つ)くすまで
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