【A】
罪を刺した 一夜の対価は
言葉にしないで ガラス越しに描いていた
鳥籠の中 この孤独は秘密で
終わらせてしまえば良かったの
【B】
雨宿りと後悔を
鼻で笑えるわけもない 味気ない
今更 行方さえ知らずじまいの
あなたの事を
【S】
交わした毒も何(いず)れ薄れて
眠れないまま夜明けにもたれる
雑な芝居で きっと 置き去りにするでしょう
崩れ落ちそうな雨間
乾き切った文字で埋めた
【A】
最早 苦しくはないが
言葉だけは まだ 被害者ぶっていたくて
空箱の隅で掻き乱した思考に
終わりなどないと気付いた
【C】
ゴミひとつない部屋で
面影だったそれはもう
記憶の中でしか息をせず
辿り直す正体
正解の果てで
僕を待つ者はない
それでも
【S】
雨乞いのポーズで居させて
どうかこのままで 終わりにして
気付けば静かに胸を刺す秒針
不似合いの末路へと
向かうための脚もないよな
【D】
継ぎ接ぎの手を振ってグッバイ
引き攣るだけの唇じゃ笑えない
下らない 日々を書き消した
劇場の片隅で 嘘臭い手品を眺めている
僕の方が嘘らしいと知った
【S】
交わした毒も何れ薄れて
忘れないまま夜更けに紛れる
諦めと大差ない結末だとして
今は自意識に縋っていたい
「辿れない日々にして、トラベラー」
腐り切った蓑(みの)はどうか燃やして
舞台上 笛の音 隠せない傷跡
誰一人 君を知らない
君はもう、僕を知らない。
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