(6)

 そんな召使が笑顔を見せるのは女王さまだけでした。どんなに大変で忙しいときでも女王さまが、

「あら、おやつの時間だわ」

  と言うと、焼き菓子を山盛りにしたお皿や、果物でいっぱいの籠を持ってきて、それを見て目を輝かすリンを見るときのレンはとても幸せそうに笑いました。レンはリンの傍らにたって、彼女がおやつをほおばるのを見るのがとても好きでした。リンだって、昔のように微笑むレンをみられるのがとても嬉しかったのです。まだ子どもといってもいいくらいの二人が、本当に子どもに戻れるのはこんなほんのちょっとの時間だけでした。もしも二人がそれ以外の時間に子どものような振る舞いを見せれば、周りの大人にあっという間につけいられて何もかもを失ってしまうのは二人にとって当たり前の事でした。でもレンは絶対にそんな事をさせまいと堅く誓っていましたし、リンだってその事を信じきって安心していました。


「お金が足りなくなったなら愚民どもから絞りとればいいじゃない」

  と女王さまが言えば召使は周囲を上手く丸め込んで、国民がどんなに餓え苦しもうがそんな事にはお構い無しに税金をつり上げます。

「私に逆らう者たちは粛清してしまえ 」

  と女王さまが命じると召使は、増税に堪えかねて暴徒と化した国民たちに大勢の軍隊を差し向けて皆殺しにしてしまいました。あんまりにもたくさんの人を殺したので、誰が誰の家族なのかもわかりませんでしたし、こんなたくさんの死体を見せしめとして広場に吊るすわけにもいきませんでしたから、街じゅうに死体が散乱し、酷い臭いを撒き散らし、最早そこは人の住むところというよりは地獄のようでした。

  それでも女王さまのわがままはとどまるところを知りません。毎日よくない遊びに耽り、国民の血と肉でできたお金を湯水のようにばら撒きます。その贅沢ぶりは先代の王さまよりも酷く、今まで蓄えられてきた国の財産は出て行く一方でした。レンはお金の調達の為にますます手段を選ばなくなり、強力な武器や、怪しげな薬をたくさん作らせて他所の弱い国に売りつけるようになりました。少しでも資源の見込める国があれば戦争をしかけて制服し奪い取ります。


  しかし、そのほとんどをリンは知りませんでした。レンはそんな話をリンにしたくはなかったし、リンが笑っていてくれればあとはなんでも良かったのですから話す必要も無いと思っていたのです。


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

悪くて可哀想な双子 (6)

!! CAUTION !!

これは悪ノP様の言わずとしれた名作「悪ノ娘」と「悪ノ召使」を見て感動した上月がかってに妄想を爆発させたそのなれの果てです。

・当然の事ながら悪ノP様とは何の関係もありません。
・勝手な解釈を多分に含みます。
・ハッピーエンドじゃありません。(リグレットとの関連も無いものとしています)
・泣けません。
・気付けば長文。(つまり、要領が悪い)

以上の事項をご理解いただけた方は読んでみて下さい。

閲覧数:1,488

投稿日:2008/07/03 22:51:56

文字数:1,016文字

カテゴリ:その他

  • コメント2

  • 関連動画0

  • 上月物子

    上月物子

    その他

    >shionoさん
    メッセージに気付かずすいませんでした。
    お察しの通り一年以上ほったらかしにしていたものなのですが、とりあえず書き溜めていた分だけでも年内にアップしようと思います。結末まで考えてはいるのでちゃんと形にしようと思います。
    お話読んでくださってありがとうございます。

    2009/12/08 23:50:58

  • shioro

    shioro

    その他

    続きの予定はありますか?

    2009/11/15 00:56:59

オススメ作品

クリップボードにコピーしました