○ビル風の音
○とあるレストランで、三好と美琴が向き合っている。
三好「美琴……オレと付き合わねえ?」
美琴「……ごめんなさい……。」
三好「何故だ!? 僕は背も高いし顔もいいし地位もある……いったいキミの何がそこまで男を避ける?」
美琴「それは………言えません………。とにかく、あなたとお付き合いはできません、ごめんなさい…。」
美琴(言える訳ない………だって私……結婚できないんだから……戸籍上は『男』なんだから…!)
○免許証を見ている美琴。
○去る美琴を見ている三好。
三好「アンタの秘密・・・・ぜってぇ暴いてやるぜ」
○ジャングルの建築家 OP
○三間夫妻がエントランスで言い争っている。
奥さん「もう、どこ行ってたのよ、約束の時間30分も遅れてるじゃない」
貴文「ご、ゴメン。近くに大きな水族館があるって言うから…」
奥さん「また水族館に行ってたの!? 魚じゃなくてその辺の花でも見てなさい」
○美琴、製図室に入る。
木村「林原君」
美琴「はい部長」
木村「今日から東京に転勤して来ることになった広瀬君を紹介する。前に僕が見てた部下なんだ。本社に早く馴れられるよう、キミからも何かと協力してやってくれ」
美琴「分かりました」
木村「広瀬君、林原美琴君だ」
広瀬「・・・・・・・・・・・・・ひ」
美琴「・・・・・ひ?」
広瀬「ひ、広瀬です・・・・。よ、よろしく・・・・・。」
○おそるおそる手を伸ばす広瀬。
美琴「あ、は、ハイ。よろしく。」
美琴(大丈夫なんコイツ・・・・目合わせへんし・・・・危ないヤツちゃうの?)
木村「広瀬君は東京出身だが、大学は京都で、そのまま京都部署に所属していたんだ。林原君は大阪出身だから、話が合うと思ってね。一応広瀬君の方が先輩だけど・・・まぁ呼び方は任せるよ」
美琴「は、はぁ・・・・。」
木村「広瀬君のデスクはそこだから」
広瀬「はい・・・・」
○何なん? 不愛想なやつ・・・・いや別に愛想は仕事のうちに入らんけど・・・と思いながら横目で見つつ二人とも席に着く。
○場面転換
同僚「ちょっと広瀬君、このスケールの計算間違ってるんだけど」
広瀬「えっ、あっ…す、すみません…。」
同僚「さっきも書類のコピーに失敗した挙句、失くしたでしょ!? ほんと、しっかりしてよね。ろくに挨拶もできない、簡単な計算もできない、整理もできない、何でこんな能無し、本社に来たんだか」
広瀬「す、すみ…ません…。」
○木村が入ってくる。
木村「広瀬君。紹介しよう、三間貴文さんだ。この度ご夫婦で新邸を建設されたいとのことだ。設計を君に任せたいそうだが、やってくれるね」
広瀬「は、ハイ。広瀬です、よろしくお願いします。」
木村「三間さんの旦那さんは足が悪いので、段差などに配慮して欲しいそうだ」
広瀬「では、詳しいお話は応接室でお受けいたします、ど、どうぞ……」
貴文「あなたの建てる建築を楽しみにしているんですよ…」
○去っていく三人。それを見送っている美琴。
○場面転換、トイレ。
美琴「あの男に家の設計なんて出来るんかな?」
○広瀬が入ってくる
美琴「ちょ、ちょっと! ここ、女子トイレやで!」
広瀬「あ、ハイ。あ、ぼ、僕一応女なんで」
美琴「アンタ、女なの!?」
広瀬「は、はァ、すみません…。」
美琴「あのなぁ、何で謝るねん。謝るのはうちの方やろ。」
広瀬「でもやっぱり…ヘンですよね」
美琴「ヘンて? 誰がヘンて言ったん? あたし何も言ってないですけど!」
広瀬「えっと…周りの人とか…母とか」
○ため息をつく美琴。そこに典子が入ってくる。
典子「…彼、ここで何してるの」
美琴「この人は今日転勤してきた広瀬さんです…女性です…広瀬さん、この人は坂井さん、同じ設計部で、今新宿の高層オフィスビルのプロジェクトに関わっています」
広瀬「あ、どうも…」
典子「この会社は実力主義。使えない奴はクビ…実力がないなら話しかけないで」
広瀬「は、ハイ…。」
○再びため息をつく美琴。
○数日後、プレゼンの準備をする広瀬と美琴。
広瀬「すみません、アシスタントをお願いしてしまって」
美琴「いや、いいけど。」
美琴(ったく、なんでアタシがこんなしち面倒臭いことしなきゃなんないのよ、自分のプレゼンで手一杯だってのに…)
広瀬「あ、気をつけて下さい、そこ…」
○段ボールの角に足をぶつける美琴。
美琴「痛った…」
広瀬「大丈夫でしたか?」
○三好が入ってくる。
三好「おい、三間さんいらしたぞ」
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