【結月ゆかり】この遺書を貴方に【オリジナル曲】
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歌詞です。
【壱 思考】
目の前には死体がある。この死体は、合理の渦に飲まれたようだ。貴方はそれを見ている、あるいは、恐れおののいている。揺れている。怯えている。笑っている。忘れている。
合理とは、虚構である限り理想であり、真実である限り現実である。
現代社会では「それは真実である」という認識を形成している。少なくとも、20世紀以降、ラジオからテレビジョン、そしてインターネットへと基盤が遷移していく中で「真実である」証明は補強されていった。そうして周囲には死体が形成され、地層となって、ひどい腐乱臭を放っている。
目の前だけではない。私の周囲にはおびただしい数の死体がある。
合理の渦に飲まれた死体だ。その一つを見ると、この死体はまだ若く、先ほどまで歩いていたかの様な微細さが残っている。
【弐 綻び】
私はこれについて綻びを見つけた。いいや、見つけてしまった。
貴方は静かにパニックに陥っている。貴方は人知れず死にゆく。
ふむ。言い方を少し変えてみよう。
例えばレイ・ブラッドベリは著書「華氏45Ⅰ度」の中でこの綻びを艶やかに表現している。
「大衆の心をつかめばつかむほど、中身は単純化された」
「二十世紀にはいると、フィルムの速度が速くなる。本は短くなる。圧縮される。ダイジェスト、タブロイド。いっさいがっさいがギャグやあっというオチに縮められてしまう」
とね。
死体たちの正体について分かったかね?
大衆化とともに、あらゆる「快楽」がそこらに転がるようになった。それは「消費」と呼ばれる。
このイベントだってそう違わないさ、冒頭数秒だけ聞いて良し悪しを決めるとか、サビだけを聞き流すとか、倍速で聞くとか。そう、君のことだよ。
【参 決別】
この曲が死にゆく貴方への手向けとなることを願っている。
私の目の前には死体がある。貴方の死体がある。一定の音波に一定の反応を返し、一定の言動を行い、一定の行動をする。「生きていること」よりも「生存している」ことを優先させられた。
社会の合理に酷く陵辱された貴方を見て、大衆はきっと「素晴らしい」と讃えるだろう、人工的な知能が君を見る。
私は退廃的な遺書を読みながらそう思う。解読に時間を要すような、バベルの塔の時代にあったといわれているリングワ・フランカ。字は虚ろで力無くなっている。
私は物言わぬ貴方のポケットにそれを滑り込ませ、少々の荷物を持って歩いてゆく。
この狂騒と陰惨の街から出ていくことにするよ。この遺書は君が持っていてくれ。数分の間、この話に付き合ってくれてありがとう。
今度会うときは、貴方のバイタルが稼働していることを祈っているよ。
それじゃあね。
00:00 / 05:19
【結月ゆかり】この遺書を貴方に【オリジナル曲】
██曲目です。
音楽 有象無象P
朗読 結月ゆかり
協力 ツレヅレ(https://twitter.com/@TsureDureP )
YouTubeはこちら:https://youtu.be/_RQHughcwYw
作ったもの:https://www.nicovideo.jp/series/132926
私のツイッター:https://twitter.com/UzoMuzoP
歌詞は文字数制限超過してしまったので別で投稿します。
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