暗い部屋の隅のさらに暗い棚。
日の光がわずかに当たるガラスの中

ここでおとなしく座ってるのはあきてしまったの
こんな所にいるからあなたは見てくれないのね
じゃあ歩いてみるわ
そうすれば見てくれるでしょ？


脅えるのは人間達

私達が声を出すたびに、動き出すたびに
叫び、慌て、脅える

私達だって動きたくなる時はあるわ
だってこんなに綺麗な体なんだもの
こんなに美しいドレスを着ているんだもの

あなた達が作ったんじゃないの
長い髪の毛が綺麗でしょ
透明な瞳が美しいでしょ

もっと見てよ私を
踊れるのよ　ほら
白いドレスがひらりひらり
綺麗でしょ？

どうして近くへ来ないの？
そんなに遠くへいたら私がちゃんと見えないでしょ


私達を壊すですって？
自分達で作った私達を壊すですって
あなた達に見てもらうために歩いてきたのに
私達をこんなに綺麗にしたのは見るためじゃなかったの


そんな物を私に向けないでよ
手が壊れてしまったじゃない
服が切れてしまったじゃない

どうなってもいいの？
私達はどうなってもいいの？

いいわ
あなた達が私達を壊すのなら
私達だってあなた達を壊しちゃうんだから

腕を壊されたら腕を壊すわ
足を壊されたら足を壊すわ

首を壊されたら首を壊してあげるわ


どうしたの
動かなくなって

私の服が赤くなっちゃったじゃない
でもいいわ
この方が綺麗だもの