A）
世界は思ってたより狭くて
息苦しい日々を過ごしてる
僕の社会はちっぽけで
毎日耐えながら生きている

誰かが何かを「いい」と褒めた
みんながそれに頷いていた
僕は「いい」とは思わなかった
僕はそうとは言えなかった

B)
大切なものと信じていた
大切に握ったはずだった
転んだひょうしに開いたら
手の中にはなんにもなかった

S)
もう漫然と過ぎてゆく
時間に価値を見出せなくなって
歩いた
ただ歩いた

どこかのビルの屋上で
笑い声が響いていた
振り返らずに歩いた
背中で
重い音がした

A)
なんだか風邪をひきたくなる
吐く息が全部白くなって
街の地面も行き交う人の
顔も血の気がなくて白くて

窓ガラスに嫌な顔がうつる
息を吹き付けてぼかしてやる
指先で「死ね」と文字を書いた
向こうに歩く人が見えた

B)
「ね」の字の一画目の細い
縦棒が僕の人生みたいだ
もいちど息を吐いたら
薄くなって街の中に溶けた

S)
もうやめたっていいのにさ
誰も気にも留めやしないのに
歩く
ただ歩いたら

どこかのビルの屋上で
気分がぱっと明るくなってさ
思わず
歌いたくなった

C)
ここで僕が不満を叫んだら
どれだけの人が興味をもつだろう
ここで僕が歌ったら
ねえどれだけの人が聞くだろう

S)
勇気をもって進んだ
この街がやけに小さく見えた
空は
灰色だ

雪がまた降り出したみたいだ
それを追い越して落ちてゆく
今は
生きてる
今だけは
生きている

あああああああああああああ
ああああああああああああああ
ああああああああああああああ
あああ
ああああああ