窓についた水滴
滑り落ちる頃には
闇に溶けた息が
ゆらゆらと浮かんで
右手に握った鍵
そっと沼に落とし
「帰る家なんて無い」
微笑み歩いてくよ
朝が来る前に行こう
夜が手を引いてくれる
ちょっと後ろを振り返る
誰もいなくて泣いた
わたしはここでひとり
ふらり彷徨うのよ
寂しくなんてないの
少し悲しいだけよ
蛇口を捻る音
グラスに揺らぐ金魚
ごぼり、と飲み干して
水槽になりきった
わたしはここでひとり
ゆらりたゆたうのよ
悲しくなんてないの
少し眠いだけよ
わたしはひとりだった
今もひとりきりよ
いつか帰れる日が
くるなら囁いて
「おかえり」
あぁ。
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