鉱夫は永き夢を見て

「鉱夫は永き夢を見て」


彼は今日も掘り続ける　暗く深い炭坑で
ささやかな夢　掴むため
硬い岩肌打つ音　静かな森に響いて
坑道の奥に灯が揺れる


若い夢を燃やして　激しい恋に焼かれて
ふたりは未来を誓い合い
銀貨1枚持たずに　黒いダイヤを掘り出す
輝くふたりの明日のため

煤けて汚れた肌　泥に塗れながら
汗と涙の滴がしたたり落ちてゆく

まだ見ぬ幸せ遥か　それでも明日を目指す
彼女の笑顔が瞼に浮かぶ
光も届かぬ闇の　向こうに広がる未来
薔薇色の日々　信じ続けて


夏の青い月夜も　凍える冬の夕べも
ひたすら彼は掘り進める
眠る暇も惜しんで　笑うことさえ忘れて
無情に季節は流れ去る

すべては彼女のため　痛みも苦しみも
やがて手にするふたりの　約束のために

まだ見ぬ幸せ遥か　かすかな灯りの下で
彼女と見た夢　その手を伸ばす
地の底へ落ちるような　長い坑道の奥
澱んだ時の重さが沈む

まだ見ぬ幸せ遥か　名も無き鉱夫の夢と
彼女を呼ぶ声　今も消えない
光を拒絶した闇の　迷路を彷徨いながら
安らぎの日々　求めた果てに


彼は今日も掘り続ける　暗く深い廃坑で
100年前の悲劇のあとも
誰か彼に告げておくれ　
「あんたはこの世にもういない－」
「彼女もすでに…」

硬い岩肌打つ音　今夜も森に響いて
坑道の奥に火が揺れる