肺の中溜めた息を吐いて、重力に沈む今日の午後。
着信もアラームもバイブレータで、無機質なアピールじゃ意義なんてない。
少しだけ、って、君のため、って、
差し出された甘い果実。
少しなら、って、僕のため、って、
僕が僕を誘う声に両目を塞がれる。
いつか誰か永い時を越えて「おはよう」のキスをくれるまで、僕は老いることのない体で、待つ間呼吸を止めたい。
一昨年の冬から付けている、音も無く刻む腕時計。
チクタクもカチコチも鳴らないまま、繰り返すフリをして壊れていく。
弱いだけ、って、君はだめ、って、
僕が僕を責める声に、
必死にずっと、頭を振って、
違うんだ、って言い訳して、両耳を塞いだ。
「暗い画面のまま過ごすのなら充電をするだけ無駄だと、知っても尚今日も浪費するの?」なんて問う僕から逃げ出す。
気付いたら明日になる日も、
いつ見ても針が同じ日も、
もしかして、と期待する。
ーーー 僕は今日死ぬのかなあ、って。
幾度「だめ」や「むり」や「いや」と言っても、僕の心臓はまた脈を打つ。
きっと知らずうちに止まるのかな…「おはよう」のキスを知る前に。
いずれ誰も永い時をかけて「おやすみ」のキスで眠るけど、きっと僕が僕に送る合図は「電池切れ」のバイブレーションだ。
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