このテキストは、「ひまわり」をより深く理解するための解説です。
一度聴いた後にこちらをご覧頂き、もう一度お聴きください。
それまでとは違った意味合いに感じられるかも知れません。
この曲は、しきしまふげん氏著の「現代萌衛星図鑑」を読んで、気象衛星ひまわりのエピソードに深く感動し、「はやぶさ」の時と同様に、「この感動を誰かに伝えたい」と考え、着想しました。サビのメロディは昨年8月末にできており(何故か電器屋で家電製品を見ている時に思いつきました(笑))、そこからゆっくりと広げていき、今の形がだいたい出来上がったのが昨年の12月初旬頃、音源が出来上がったのが今年の1月中でした。
ひまわり
■この空高く 太陽[The Solar]を見上げる ひまわり
晴天[ハレ]を愛して
ここでは、太陽に向かって咲く花:向日葵と、気象衛星ひまわりとを関連させるフレーズとして、太陽・晴天といった言葉を使っています。空に対応させるように太陽を「(ザ・)ソーラー」と読ませるなどして、ほんの少し言葉遊びをしています。
■もしも空高く 誰か見ていたならばきっと
嵐に散らなかった 千を超える命の焔
気まぐれな風の前に 時に人は吹き飛ばされ
牙を剥く水に呑まれて また一つ消えてく笑顔
ひまわりができる以前、人は台風や嵐に対しては無力でした。台風の進路も推測できないため、いつでも上陸の危険性が叫ばれる頃には既に手遅れで、無数の犠牲者を出していました。1954年の台風15号(洞爺丸台風)では、青函連絡船洞爺丸他5隻が沈没、1,403名が犠牲になりました。
■欲しいのはただひとつ 行方知れない明日の空
未来を予知だなんて 大それたこと言わないから
気まぐれな雲の道を ただ見てられる目が欲しい
風に命消されないように 君は生まれた
もしも気象観測ができていたら、1,403名の犠牲者を出すことはなかったはずです。富士山に作られた気象観測レーダーにより、以前ほど海難事故を起こさずに済むようにはなりましたが、それでもまだ不足でした。高さ3.776kmの富士山から、高さ36,000kmの高みへ。日本初の気象観測衛星として、1977年7月14日、後に「ひまわり」と名付けられる衛星GMS-1は打ち上げられました。
■この空高く 雲を見渡す ひまわり
昇る朝日待望し[まっ]て
青く輝く地球[ほし]を見守る ひまわり
空抱きしめて
ひまわりから送られてくる観測データは、日本の気象観測精度を飛躍的に高めました。今、台風が上陸したり、突然の低気圧で嵐や吹雪になったりしても手早く対策を施して犠牲者を抑えられているのも、ひまわりのデータがあってこそです。こうして、ひまわりは何千・何万という命を救い続けたのです。
■命尽きた時 新しい種が芽吹いて
何度も生まれ変わる 不死鳥宿る花のよう
ですが、ひまわりも年をとります。技術革新によってより高性能な衛星も生まれます。そのため、ひまわりは約3~5年毎に代替わりをしました。1981年8月11日に2号が、1984年8月3日に3号が、1989年9月6日に4号が、1995年3月18日に5号が、それぞれ打ち上げられました。
しかし、GMS型の観測衛星は時代遅れになりつつありました。そのため、ひまわりに替わり、航空機の位置情報等もやりとりできる新型の衛星MTSATが打ち上げられ、ひまわりは5号の運用終了を以てその役目を終えることになっていました。MTSAT-1、「みらい」と名付けられる衛星は、1999年11月25日に打ち上げられました。
■空に消えたみらいに 明日の種を失っても
新しい芽が出る時まで 独り戦った
しかし、みらいは宇宙に羽ばたくことなく散りました。みらいを乗せたH-IIロケットが打ち上げに失敗、太平洋上空で爆破されたのです。ひまわり5号は、後続のみらいと共に、未来に繋がる可能性を失いました。この時から、運用限界を超えた5号の孤軍奮闘が始まります。
■この空高く 嵐を睨む ひまわり
長い時を耐えて
独り気高く ただ咲き誇る ひまわり
明日を夢見て
気象観測ができなくなれば、日本だけでなく、アジア全域の天気予報の精度は30年分以上後退します。それはまた幾多の犠牲者を出すことを意味し、絶対に避けなければなりませんでした。既に引退したひまわり4号のバックアップも得、なんとかギリギリの状態で気象観測は続きましたが、2000年に入り、とうとう4号が力尽きてしまいました。ここで5号が倒れたら、悲劇は繰り返されます。その5号も寿命は近づいており、悲劇の足音は背後に迫ってきていました。
そんなギリギリの状況下で、アメリカの既に引退した衛星ゴーズ9号が、ひまわり5号を助けるために駆けつけました。一応観測をゴーズ9号に譲ることで、何とか寿命を長らえることはできましたが、このゴーズ9号も幾多の問題点を抱え、いつ倒れるか分からない状態でした。早急に対処しなければならないことには変わりありませんでした。
<間奏部解説>
途中ブレイクがある部分(4:45くらいから)があります。この印象的なキメは、数えてみると1回・2回・3回・4回・5回鳴っています。これは、ひまわり1~5号の系譜を示しています。しかし、6回のブレイクが来ることなく墜落し、ダークな間奏部に繋がります。このダークな間奏部は、ロケットの打ち上げ失敗や泥沼の裁判、火星探査機のぞみの喪失等々の悪夢に見舞われたJAXAの暗黒時代を示しています。その後、明るい間奏部に展開することで、暗黒時代を抜け、希望に満ちた新しい時代を迎えたこと、ついにひまわりに後続が誕生したことなどを示しています。
■雨の日も雪の日にも ただそこで咲く花のように
風に流されることもなく "今"を見つめてる
失われたみらいに替わるMTSATが2006年2月26日、ついに打ち上げられました。みらいの代替機であった新しい衛星ですが、これまで馴染んだ愛称「ひまわり」を受け継ぎ、ひまわり6号となりました。長い長い孤軍奮闘を生き延びたひまわり5号は、運用開始から10年という年月を経て、後継機に役目を譲り、眠りについたのです。
■この空高く 僕ら見つめる ひまわり
昇る朝日待望し[まっ]て
青く輝く地球[ほし]を見守る ひまわり
空抱きしめて
■この空高く 太陽[The Solar]を見上げる ひまわり
■今も気高く ただ咲き誇る ひまわり
晴天[ハレ]を愛して
<アウトロ解説>
アウトロの最後の最後に突然入ってくるリードギターのフレーズは、前半は6音、後半は7音で構成されています。つまり、ひまわり6号、7号によって、今も観測は続けられているということを示しています。
ところで、「ひまわり」の花言葉をご存知ですか?
それは、「あなただけを見つめてる」。
ひまわりは今も、地球を見守っているのです。
以上です。
【ネタバレ注意】ひまわり・歌詞/楽曲解説
「ひまわり」の歌詞や、楽曲に仕込まれたギミックなどを解説しています。ネタばれ注意です。
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参考:現代萌衛星図鑑(しきしまふげん)
この空高く 太陽[The Solar]を見上げる ひまわり
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ご意見・ご感想
wanita
ご意見・ご感想
こんばんは。wanitaと申します。ピアプロでは好きな曲に小説をつけて遊んでいます。
解説を見ながら曲を聴きました。間奏の意味するところを読みながら、音楽も『ことば』だったんだなと感じました。面白かったです!素敵作品をありがとうございました!
2011/03/19 21:52:57
@アルミ缶
ご意見・ご感想
はやぶさでも泣かされ、ひまわりにも大いに泣かされました。キセノンさん、名曲と、知らなかった感動を本当にありがとうございます
2011/03/14 12:53:12
kouheri
ご意見・ご感想
感動した。もう一度聴いてくる。
2011/03/08 06:26:55