びっくりした。
フィギュアが、まさか喋るとは思わなかった。
「フィギュアじゃなくて、調律用端末です。ちなみにわたし達は限られた数しかおりませんので、マスターはものすごくラッキーです」
あれ?
今、私が思ったことを読み取った?
「多分、偶然ですよ」
この端末、普通に受け答えしてる。
とりあえず、この小ささならば何とかなる。
「えっと、このサイズは運搬用のサイズなので、丸一日放置すると初音ミクのプロフィールにある通りの身長になりますよ」
やっぱり、普通に私が考えてる事が分かるようだ。
玲菜さんが、復活する前に隠さないといけない。
「マスター残念なお知らせがあります。玲菜さんは、すでに復活してます」
「いや~びっくりしたよ。まさか、家に居るボーカロイド達と同じのが居るなんて思わなかったから~」
え?
今、玲菜さん『家に居るボーカロイド達と同じのが居るなんて』ってとか言った様な気がしたけど多分気のせいだろう。
「残念ながら、それは気のせいではないですよ」
私の思ったことがミクにはすべて分かる。
「ん?もしかして、ファリスの考えてることがこの子には分かって、返事してるように聞こえるのは私だけなのだろうか・・・」
私が思った事が分かるなら、私の変わりに伝えてくれるだろう。
私がこれから思うことを、ミクから玲奈さんに伝えてほしい。
それは気のせいではないです、と。
「えっと、マスターが『それは気のせいではないです』って言ってます」
「なるほど、話は変わるけど、ミクがプロフィール通りの身長になる姿って見れるの?」
玲奈さんの質問に少し困っているミクを、私は掌に乗せる。
「えっと、それはどう説明したらよいのでしょうか、その・・・えっと・・・」
どうやら、ミクが元の身長に戻る所は誰にも見せられないという事なのかもしれない。
例えるなら、猫は飼い主の知らない場所で死を遂げることのようなものといったところだろうか。
「マスター、それ頂です。えっと、ネコさんが飼い主さんの知らない場所で亡くなられるみたいな感じです」
「例えは微妙だけど、なんとなく分かったわ。早く言えば、誰にも見せられないて事ね」
「その通りです」
そう言い切ると、私の掌からテーブルに向かってミクは飛び降りた。
うまく着地するかと思ったけれど、思った以上にドジの様で顔からの着地となってしまったようだ。
「だ、大丈夫?」
動かないミクを、心配そうに見つめる玲菜さん。
「だ、大丈夫です・・・」
何とか、自力で立ち上がるミク。
ふらふらとしていて、見たからに大丈夫そうではない。
「マスターも、そんなに心配そうに見つめないでください」
そんな風に和気藹々としている時に、私の携帯電話のメール着信音が鳴った。
メールを送ってきたのは、昔バンドを組んでいた時に知り合った仲間からだった。
そのメールが来てから、続けてバンド仲間からのメールが届いた。
そして、私には忘れることの出来ない大切な親友からもメールが来た。
内容は、どれも同じ感じのものだった。
言葉は違うけれど、結果的には私を心配しているといった内容。
「ようやく、明るい顔つきになったわね」
私の顔を見た玲奈さんは、そう言った。
「メールを見る前と見た後の顔がまったく違うって事は、余程大切な人からもメールだったんでしょ」
私はいつも通りしているつもりだったけれど、他人から見たら生気も感じられないくらいだったと言うことだったのだろうか。
「玲奈さん、玲奈さん。マスターが、『私の顔は生気も感じない顔してましたか?』って言ってます」
ちょ、ちょっと待った!!
私の考ええていることが分かるからといって、今考えていた事は言わなくていいのに。
「そうね、財布を取られた時は生きた屍みたいな感じ。私が話しかけた後は、少しましになって。それでもってミクが動いた時はさらに少し明るくなり、メールを見て完全復活といった感じね」
玲奈さんは、親切に教えてくれた。
「それと、そろそろ私は帰るとするわ」
そう言いながら、スーツポケットから名刺とペンを取り出して裏面に何かを書いてる。
「これ、私のプライベート携帯の番号とメールアドレスね。何か相談したいことがあったら、掛けてくるといいわ」
名刺を受け取って、玲奈さんを玄関まで見送る。
「あ、そうそう。今度から、本名で呼んでいいかしら?」
「『いいですよ』だそうです」
私の肩に乗っているミクに、代わりに話してもらう。
「『でも、私の本名知ってるんですか?』って聞いてます」
「知ってる。玄関の表札にフルネームで『梢 深雪』って書いてあったから」
「『えっと、それじゃぁ、深雪って読んでください』だそうです」
それにしても、玲奈さんがちゃんと表札を見ていた事にびっくりした。
「OK。深雪さん、バイバイ」
そう言って、玲奈さんは手を振り去っていった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

小説?『歌声』 4

今回妙な例えがあると思いますがあまり気にせずに・・・
キャラ説には既にファリスの本名が書かれていますが、本編ではようやく本名が明かされました。
ファリスは芸名ということだったんですね。
とりあえず二日目はここで途切れるわけですが、ついに三日目に変化が起こります。
何が起こるかはお楽しみということで~

閲覧数:124

投稿日:2008/04/20 16:35:14

文字数:2,007文字

カテゴリ:その他

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