御神双村

これは、夏の暑さに暈された
遠い私の村の話
耳を澄ませたならば蝉の哥
微かに耳に障る
「"御神双村"」

じっちゃんが言うには
「この村は、御双の神の睨み合いの狭間」
「西にゃ行っては駄目」と、
「拝むんなら東に行きなさい」
「東の神様にゃ、縁結。取り憑こうなそうて、
正しき道へわしゃらを連れて
行きなそうるぞったら拝みん」と

ばっちゃんが言うには
「気をつけろ。西の神は左を喰うちゃる。
もう喰わにゃば目んも聞こえも失うゆうたら
近づきんちゃう」
そう、東も西も私にはまだ判らぬ頃だったから
地図も全く読めずに颯爽迷いて
歩み止めず、山へ

地図から離れた私の足跡
紅色からずれてく空、足音
ずれてく、ずれてく、私の足元

どちらにしようかな
かみさまのいうとおり

瞬間、重力から投げ出され
触れる、冷たく注ぐ雨を
奈落、身はとっくに見捨てられてて
まるで、尽きた蝉よ
お縄、謎のお縄を脚で切る
涙、出るほど余裕なくて
サラバ、ただ「仏ほっとけ」と苦笑い
祟り、噛み締めるまま

ここが、西か東かも判らず
さらに、彷徨い揺れるままに
咲う、地蔵、雨色翻せ
生きて、死にて、常世
宛ら、とばっちりの今を思い
眩み、黒にも近い明日よ
眼、粗相ゆっくり閉じてゆくまま
厭世、その村の名は
「"御神双村"」

左の盲に気付かされる
ノイズを枕に目を閉じる

はっと目を覚ます午前九時
左、耳も目んも治りんさい
せんせが言うには「お大事に
左喰いの来るまんに帰りゃんせ」
朝露輝いた畦道を
微かに聞こえるイナゴの足音に
物憂げなしに、ある意味虚、安らかに行く
ぼっこをしながら午前十時
ゆるりゆらりとお天道様に往く
坊さんが言うには「ありがたや」
ただ頭を下げては何もせぬ
"なんだか解らぬ物騒な像"
"お縄が巻かれた巨木"を通り過ぎ
見慣れた景色 我が家の扉
見知らぬ影が

震撼、左喰いのお出ましかと
恐れ、安寧探すままに
常に、背後についた影・視線
まるで、針の山よ
だれも、助けには応答せずに
されど、誰かに追われていて
純真、左を覆い隠しては
走る、わたしは童

納屋の、小隅にひた隠れては
震え、辿々しき手の中で
「夢よ、さも一刻も早く覚めて」
願う、蜘蛛の糸よ
いつか、眠りこけていたままに
欠伸、視線のカケラなくて
不思議、縁の神のお力か
なりゃば、拝みんせんと
「"御神双村"」

時は夕暮れ 臨む林
とっくに八朔の香りも落ち
進む山路に飛び交う虫も
汗肌に誘う

西の左喰いの祟り
東の縁結びなる縁神
劈く私は狭間の村
遊ばせ賜われる

階段の角の地蔵の横目に
匂う経てにゃ雨と土の粉
全く信仰厚く 私
ありがたやと参る

東の縁神
祠拝みとやってきたなりゃにゃ
不思議をみる吹っ切れたる縄
さては、私
東で祟りゃんす

これは、夏の暑さに摩耶化された
村の、娘の縁を結ぶ
全て、世の正しきに率いんと
これが、神の常よ
まさに、この一体分身なる業よ
知らぬ、記憶のうちに愛よ
西の、彼の邪なるやを討ち入れよ
身体、赴くままに

東、西の睨みに挟まれた
村を、わたしの村を守る
娘、山に入る儀も知らぬまま
無垢で、罪な、贄よ
なりて、西の山路に分け入りて
雨の、あがりの残を強いて
見事、長きなる縁を果たさんと
ここが、永遠の村
「"御神双村"」

そう、これが私の昔話
今も永遠の村
「"御神双村"」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい
  • オリジナルライセンス

御神双村

よろしくお願いいたします。

閲覧数:448

投稿日:2023/08/06 19:20:50

文字数:1,415文字

カテゴリ:歌詞

オススメ作品

クリップボードにコピーしました