その日　目が覚めたロボット
起動音が鳴るよりも先に
思ったの

あのひとがすき

わかる言葉で言えば
ええと
魔法使いか科学者
丸い眼鏡の
Dr.Merlin

ロックの掛かった白い部屋
窓から見える　丸い背中
こっち向いて笑ってくれないかな
背伸びをしてるロボットは
キーの番号知りたいよ
隣に行って　おはようを言うの

名前を付けてほしいな
あなたに呼んでほしいな
できるだけの言葉も 練習するから
ふわふわってしていたいな
もし壊れても忘れないように
とっておきの フロッピーを握った

ある日　ドアの前のロボット
真面目な掃除機たちに見つかり
回収されたの
『配置異常デス』

わかんないこと言うなぁ
もう一回こっそり潜入
気付いてほしいの
Dr.Merlin

一人の部屋で俯いて
涙を流してどうしたの？
こっち向いて手を振ってくれないかな
愛する人を失う事　取り戻す術も無い事が
ロボットは何も　わからないけど

ほんとの
名前教えてほしいな
あなた呼んであげたいな
できるだけの言葉で 笑わせてあげたいのに
ちくちくってして痛いな
あったかい音聞こえるように
とっておきの カセットを鳴らした

'奇跡の人'の最初の日
初めて作った01号機
何十年の時を経て 動き出した
埃も自分で払ったし　頭の青も塗り直した
ここにいるよ

ねぇ　大好きだよ

名前を付けてほしいな
あなたに呼んでほしいな
できるだけの言葉も練習するから
ふわふわって　していたいな
また壊れても忘れないように
今　とっておきの あなたに会いたいの