色鮮やかな花々や木々　豊かな野原に響く音
野原に響くは　何の歌？

砂利道にさくは赤の花　赤き花が謳うは苛烈な愛の歌
水辺にさくは青の花　青き花が詠うは優しき祝福の歌
花畑にさくは黄の花　黄の花が謡うは力強い平和の歌
草原にさくは緑の花　緑の花が唄うは安らぎの子守唄
美しき花々は咲き誇り　野原に歌が溢れかえる
けれど花々は脆いので　呆気なく散り果てる

ある日一人の少女が野原で転び　赤の花を潰れてしまう
ある日一人の少年が野原を走り　青の花は潰れてしまう
ある日一人の老婆が花々を摘み　黄の花は手折られた
緑の花が唯一人　悲しみにくれながら子守唄を唄った

ある日一人の青年が　野原でひっそり泣いていた
緑の花は気になって　青年に如何したのと聞いてみた
青年は恋人が亡くなって　野原で泣いていたという
緑の花は気の毒になって　青年が安らかに眠れるようにと
青年のために子守唄を唄った

やがて青年は静かに眠りについて　野原に残るのは緑の花一輪
緑の花は唄いつき　やがて静かに枯れてった
野原は荒野に変わり果て　美しき花々は見当たらない
何年何十年何万年　長い長い時がたち
荒野は野原に変わり　五つの美しき花々が咲き誇る
砂利道にさくは赤の花　赤き花が謳うは苛烈な愛の歌
水辺にさくは青の花　青き花が詠うは優しき祝福の歌
花畑にさくは黄の花　黄の花が謡うは力強い平和の歌
草原にさくは緑の花　緑の花が唄うは安らぎの子守唄
そうして緑の花の直ぐ近くには　大きな大きな木が一本