舞台は彼女の生きる場所
彼女のために存在してた
どんな役でも完璧にこなし
観客たちは魅了されてく
華やかなライトを浴びて
瞳に浮かべる涙だけで
鳴り止まない拍手に包まれ
誇らしげな顔を見せた
この時 彼女は廻りはじめてる
歯車の音に気付けなかった
それまで疑問を持たなかった
与えられた台詞に
小さな違和感を覚え立ち尽くし
舞台の上で彼女は止まる
困惑してる観客の
無数の視線が耐えきれなくて
怯えた顔で後ずさるよう
舞台の上から逃げ出していた
「私は誰でも演じられるのに
私の事だけ演じられない」
どんなに記憶を辿ってみたところで
自分の気持ちが想い出せない
あんなに愛したあの人の事でさえも
物語の中の出来事みたい
いつしか彼女は演じる事さえ
演じている事 気付き始めた
あんなに愛したあの人を殺めた
あれも舞台の上の出来事で
だけれどあの時 掌を赤く染めた
鮮やか過ぎる記憶が消えない
覚えた台詞を何度も口ずさんで
瞳を閉じれば聞こえる歓声
窓を叩いてる雨の音を聴きながら
割れた鏡の中で彼女は笑う
00:00 / 04:17
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想