賑わいの声遠く　煉瓦色　裏通り
骨董屋のカウンター　店番は眠る猫
真鍮のトランペット　肘掛け椅子　銀時計
ガラスケースの少女
バラの頬　眠り姫

紅いくちびるに口づけて　箱の外へと連れ出して
愛してくれる人を待ちつづけている
ひとりきり

おいてけぼりの少女
サファイアのひとみは濡れて
百合の花のようなドレスまとい　夢に見るの
ガラスケースを開けるあなたを

来客のベルが鳴る
頬染めた少年は　握り締めた金貨で
きみをその腕に抱く
黄金色の太陽　そよぐ風　人の声
きみの名前はエルエ
あの子への贈り物

青いひとみは輝いた　彼の語るやさしい少女
「きみと同じひとみのあの子を　僕は、愛してる。」

やっと出会えたあなたのために
私、あの子のもとへ
今はしばしの別れ
ドレスまとい　夢に見るの
ガラスケースを開ける少女を

――金貨の盗人よ、命で罪を購えよ。

「あなたがいたならば、他には何もいらないのに。」
おいてけぼりのエルエ
サファイアのひとみは濡れて
彼が愛し　彼を愛す
青いひとみ　二人の少女

昔々、遠い日の話。