昔、昔、ある和の国のあるところに、一人の姫君が居ました。
 彼女はこの国のどこを探そうと、適う者はいないぐらい美しい容姿でした。
 しかし、その姫には誰にも言えない秘密があったのです。それは、自分には鬼を操る力があるということ、そして、紅月が昇る時に人を殺してしまうこと。
その秘密を知っているのは、二匹の鬼だけ。
 一匹は、青色の男の姿をした鬼。もう一匹は、赤色の女の姿をした鬼でした。
 
 ある日彼女は、物思いにふけっていました。自分には、何かが欠けていると感じられてならなかったからです。いくら考えてもわからないので、歯がゆくなった姫君は、また人を殺しに行くことにしました。
 その日、姫が訪れたのは遊郭です。男を誘う女たちとさまざまな香の煙が漂う中、彼女は彷徨い歩きました。しかし、手頃な獲物はなぜか見つかりません。すっかり歩き疲れて、のども渇ききったときでした。一人の少女が彼女を見つめていたのです。
 まだあどけなさの残る子供がなぜ、こんな場所にいるのか分かりませんでしたが、もう我慢の限界でした。姫はその少女を襲おうとしましたが、その少女は一つも身じろぎを見せませんでした。むしろ殺してほしいと望んでいるようでした。
「なぜ・・・?」
つい姫は声が漏れてしまいました。それを聞いた少女は、
「美しいお姫様、あなたは鬼なのでしょう?お願いです。私を食べてください。」
そう言って泣きながら姫を抱きつきました。初めて人に求められたことに強い衝撃を受けた彼女は、ぽろぽろと泣いてしまったのです。正体がばれたことはまずいことなのに、その少女を離すことができませんでした。
 
そのとき姫は自分のかわきの理由に気づきました。自分は人を殺したいのではなく、誰かに必要とされたかったのだと。そしてまた、自分と同じ女の子の友達が欲しかったのだと。

 鬼の姫は少女を自ら城に招き、共に暮らすことにしました。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

鬼姫-前編-

コラボに投稿する創作童話です。
「鬼姫伝説」というのがあるのですが、それは少し怖いので、自分でこんな伝説があればいいなと思うものを作りました。
ちなみに前編は、姫と一人の少女の出会いです。

人物設定は以下のとおりです。
鬼姫:ミク 少女:リン 鬼:KAITO・MEIKO

後編もぜひ見てください。
http://piapro.jp/content/h518o2ctjn3da2f6

閲覧数:418

投稿日:2009/01/10 21:45:43

文字数:805文字

カテゴリ:その他

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  • 浮草

    浮草

    ご意見・ご感想

     読ませていただきました。
     まとめての感想は後編の方にいたしますので、こちらではとりあえず前編の文章の(役に立つか経たないかよく分からない)アドバイスをさせていただきます。ちこっと文章の添削みたいな形になるので、ご了承ください。

    <1のまとまり> 日本のお話ならば「和の国に」よりも「和の国のあるところに」のほうが、昔話の始まりっぽいかな、と思いました。姫というのは、良家の娘もさす言葉ですので矛盾も出ないと思います。
     「その姫君は~~姫でした」と一文の中に「姫」が二回出てしまっているので、「その姫君は」は「彼女」に置き換えてしまった方がいいですね。


    長いのでその2に続きます。

    2008/10/15 21:22:12

  • 浮草

    浮草

    ご意見・ご感想

    その2


    <2のまとまり>
    「ある日、彼女は~~あると思ったからでした」
     ここは、もっと簡潔にまとめていいと思います。
    ・改案<ある日彼女は、物思いにふけっていました。自分には何かが欠けていると感じられてならなかったからです。>

    「また人を殺しに行きました。/その日は遊郭に行きました。」
     いきました、が二回続いてしまっているので、ちょっと語呂が悪いです。
    ・改案<また人を殺しに行くことにしました。/その日、姫が訪れたのは遊郭です。>

    「男を誘う~~のどが渇いたときでした」
     ちょっと物足りないので、姫が人を殺したくて遊郭に来たのにまだ獲物を見つけあぐねている感じを、入れたらいいのかなと思います。
    ・改案<男を誘う女たちとさまざまな香の煙が漂う中、彼女は彷徨い歩きました。しかし、手頃な獲物はなぜか見つかりません。すっかり歩き疲れて、のども渇ききったときでした>

    「その少女は一つも抵抗をしませんでした」
     ここは、「一つも」よりも「少しも」のほうがいいなと思います。「一つも」なら「身じろぎ」のほうが個人的には好みです。

    「姫を抱き締めました」
     抱きしめる、というとややおとなっぽいので、姫に抱きつきました、のほうが少女の幼さが出るかもしれませんね。

    「そのとき姫は~~女の子の。」
     ここはちょっと文章が分かりにくいので、整理した方がいいと思います。
    ・改案<そのとき姫は自分のかわきの理由に気づきました。自分は人を殺したいのではなく、誰かに必要とされたかったのだと。そしてまた、自分と同じ女の子の友達が欲しかったのだと」

     なんだかごちゃごちゃといろいろ書きましたが、すごく引き込まれる出だしでした。
     二人の出会いでどう物語が動いていくのか、楽しみです。

    2008/10/15 21:21:39

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