私はゆっくりと目を開ける。
暗い部屋
一瞬、私は暗い森のあの家に戻ってきたかと思った。
暗さに目が慣れると、ここがあの家とは違うことに気づいた。
ギィィィ
どこかでドアが開き、赤い髪を両方でカールにした少女が入ってきた。
手には二人分の暖かな湯気を立てるスープを持っていた。
「あたし、テト。これ食え」
「あ、あのレンは今どこへ?」
私は恐る恐る訪ねた。
あんなことをしたのだ、サーカスの人たちに袋叩きにあっても文句は言えないことは知っていた。
「あの子、隣で寝てる。」
そういうとテトはリンの隣のカーテンを引いた。
レンは静かに寝ていた。
「うるさいから眠らせた。しばらくしたら起きる。」
そう言うとテトは傍らのテーブルにスープを置くと、部屋から出て行った。
「あいつらをサーカスに入れるって!」
ネルが怒りを露わにする。
「前にも言ったとおり、あの子たちがサーカスに入る気なら僕は入れるつもりだ。」
カイトは部屋に全ての団員を集めていた。
あの二人の今後を相談するためだ。
「カイトは甘いんだよ!せっかく治してやったのに、外に遊びに行って倒れるバカ娘と、恩を忘れてあたしらにヤッパ突き付けるガキを許すなんて!縛り首にしても文句は出ねえよ!」
カイトは懐から粗末な木の実を数個取り出し、テーブルに置いた。
「あの女の子の服に入っていたものだ。あの子は外に遊びに行ったんじゃない。食べ物を探していたんだ。」
カイトは静かに話を続けた。
「あの衰弱具合からみて、しばらく食事も水も飲んでいない。おそらく親ももういないだろう。」
「でもよ・・・」
「見知らぬ人物が家に居たら僕でも追い出す。ましてや大切なものがなくなっていれば疑わないほうがおかしい。あの子は当然のことをしただけだ。」
「ネル・・。仕事を求めてきたら誰であろうと迎える。それがこのサーカスのたった一つのルールだ。」
カイトに諭され、ネルは気押されたか先ほどまでの怒りは消えていた。
「決めるのはあの子たちだ。僕もその考えを尊重する。」
「ちょっと外の空気を吸ってくる!テトも付き合え!」
「をーけー」
「レン起きた?」
懐かしい声に導かれ、レンがゆっくりと瞼を開く。
まだ頭がズキズキと痛むが、身を起しリンと向かい会う。
目にしたリンは元気で、まだ戦争もなく、幸せだったころの幼いリンを思い出させた。
「レン、一緒に食べよう?」
リンが差し出したスープはまだ温かく、おいしそうな香りを漂わせていた。
「・・・・あいつらが用意したものなんていらない。」
そういうと靴を履き、リンの手を引く。
「行くぞリン!ここに居たらあいつらに何をされるか。」
「あたしたちはそんなことはしないわ。」
レンが振り向くと、そこには豪華な深紅のドレスをまとった団長ーメイコーが立っていた。
深紅のドレスを着たメイコが立っていた。
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想