白くて灰色。矛盾の空から
ふと差し伸べた手の平
白く光る雪の結晶
ひらり一片舞い降りた

夏の気配を感じる今時分
お前は何をしに来たのだ?
こんな所にいては…そら
お前の細い細い結晶は溶けてしまうではないか

緻密な空のエンブレムは
手の平の暖かさなど構いもせず誇らしげに語り始めた

遠い遠い昔、私の仲間達が
戦火から幼い命を庇い散っていった
半身を失った私の仲間達は
道行く勇者によって
永遠の雪の街に運ばれたのだと

静かに静かに降る雨の中
お前は何をしに来たのだ?
そんな事を語っている間にも…そら
お前の細い細い結晶は溶けてしまうではないか

精工な匠の技を刻み込まれたエンブレムは
身体の半分を崩しながら嬉しそうに語り始めた

遠い遠い砂漠の国で、私の仲間達が
オアシスを統治する王に会った
北の地に降る雨を見たいと言って
一千の馬と従者が夜通しリレー。
雪を見た王は言った
『なんとまぁ白き事よ。このオアシスの全ての者の心よりお前は潔白』

やがて雲の合間からのぞく太陽
お前は何をしに来たのだ?
そんな顔をしている間にも…そら
お前の細い細い結晶は溶けてしまうではないか

聡明にして高潔。誇り高き精霊のエンブレムは
切れ切れの声で大切な吐息を漏らすように語り始めた

遠い遠い記憶の片隅、憶えていますか?
私は貴方の流した涙

淋しさに耐えながら嗚咽で押さえつけ
堪え切れずに落ちた救いを求める手
混乱と狂気の闇に呑まれながら
必死にもがいて、もがいて
絶望に目が覆われてしまう今際の際に伸ばした
誰にも気付かれずに闇に呑みこまれた手

空を巡り地を巡り風に乗って
貴方に会いにやって参りました

ここは牢獄ではありません
その闇を見つめてください…ほら
世界中が息を潜めて貴方を見守っている
貴方は独りではありません
この風を聞いて下さい…ほら
こんなに貴方を祝福する声を孕んでいる

陽が辺りを照らし出し、やがて流れ始める日常
お前は何をしに来たのだ?
そんな顔をしている間にも…そら
お前の細い細い結晶は溶けてしまうではないか

ウシュクベーハー、季節外れのエンブレムは
少しずつ空へとその身体を昇華させながら語り始めた

忘れないで下さい。私が、私がここにいる事を
この世界、何処までも巡る世界は全て貴方のもの
貴方の伸ばした手は誰にも届かなかったけれど
絶望がその目を覆っているのだけれど
それでも貴方は何一つ苦しむ事なんて無いのです

何度でも、何度でも
私は貴方を見つけます
雲に溶け雨に混じり
貴方が幸せになるまで何回でも見つけます
だから…

陽気に、寒々しく。矛盾の空へ
じっと見ていた手の平
今はもう一滴の水
ぽつり呆気なく地へ落ちた

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

雪、一片の旅

歌詞になるんだかならないんだか判りませんがとりあえず投稿してみました。

閲覧数:44

投稿日:2008/06/11 21:12:51

文字数:1,137文字

カテゴリ:その他

クリップボードにコピーしました