石

人間六度

【石】

ずっと前から僕は　君のことが好きでした
乱暴に脱ぎ散らした制服が　よくごちゃ混ぜになりました
でもどうしてか近頃は　口を聞いてはくれません
嗚呼どうやら僕は君に　嫌われてしまったようです

僕にどんな落ち度があったかは分かりませんが
とにかく機嫌をそこねないようにいつも
君に会いに行く時は必ず近くの花屋で
いつものあの黄色い花を買って行くのです

でも僕と君の体温は　違いすぎて　いつも
触れるたびに僕は　涙を流す　いまや
消して埋まることのない　その溝を超えようと
僕はときのたまに　屋上に立つ

初めてのキスは　夕方の下駄箱の隅で
最後のキスは　倒れたロッカーの中で

ずっと前から僕は　君のことが好きでした
角がたたない優しいところも　全部僕の好みでした
でもどうしてか近頃は　君は角が張ってるんです
触れようとすると　いつも僕を傷つけるのです

あなたの名を何度も叫ぶことは　つまり
刻まれた文字の復唱にすぎない　もはや
消して超えることのない　その溝を埋めようと
僕はときのたまに　信号を間違える

嗚呼この僕に何か悪いところが　あるのなら
心臓ごとそれを取り去っておくれ　
君の機嫌を損ねてしまった　僕が悪いんだ
僕はきょうも線路の　淵を歩く