幻影に閉ざされた霧深い森の奥
真夜中の声が僕を呼ぶ
悲しみの廃屋へ結ばれた細い糸
手繰り寄せる闇の底
砕け落ちた天窓で凍える月光 夜の静寂
剥がれた床に散らばった消え残る幻を
指先でなぞり確かめる
あの日の木漏れ日も微笑みも此処にない
傷跡と喪失と
青白く透き通るあなたの影 迷える夢を見せる
幕を開けよう 幻燈師よ映し出せ
荒れた壁の銀幕 ふたりのロマネスク
憂いに満ちた瞳の遠い日の少女
あなたは指を伸ばして僕をいざなう
蝋燭の火を揺らす夢魔の吐息が
奏でる古いマドリガル
かすかな灯りに浮かぶのは影絵の舞踏
恋に散るバレリーナ
殉愛に零れ咲く黒い百合 耽美な夜の頽廃
闇に溶けよう 幻燈師よ弔いを
短い春の追憶 ふたりのロマンシア
朽ちた十字架 草生す棺に跪き
眠るあなたに囁く「マダ僕ヲ待ツ?」
ただひとりだけ 時を重ねる絶望
冷たい月の光にこの愛を捧げれば
闇にまぎれて 時針を進める死神
悲劇の向こうのあなたに せめて慈しみを
恩寵をなくした 僕はあなたへさまよう
帰ることない異世界 月影の幻燈画
彩りなくしたフィルムの記憶はよみがえり
月夜に交わるふたりに永遠の祈りを
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