化け物だった
化け物であった
生まれたときからそうだった

化け物だった
少なくとも人間のようではなかった

仮面をかぶることを覚えたのは
もうずいぶんと前のこと

離れなくなった仮面を剥がしたのも
ずいぶんと前のこと


化け物だった
受け入れられることは今日までなかった

化け物だった
少しでもはみ出せば嫌われた顔

化け物だった
手にした仮面をそれでも愛せなかった

人間の自分を愛せないような
化け物だった


ピエロのように振る舞って
笑われることは少し楽しかった
聖人君子の真似をして
窮屈でも生きづらくはなかった
ちょっとは悪い子になってみて
あなただけって嘯いて
でも全部嘘って思ってしまった

化け物だった


この世を愛せない自分を愛せない
死ねない自分を愛せない
誰かを助くことも
自分を生きつくすこともできない
世界を愛せない自分を
愛せない
あなたを愛せない自分を
愛せない
一度でいいから
こころの底から
好きって言いたかった

化け物でした



化け物だった
信じることをずっときっと知らなかった

化け物だった
誰より臆病な不遜で心を埋めてた

「化け物なの？」
ねぇ、みんなこんなもんだって思っていました

愚かにも
愚かにも
思っていました


同志の仮面をかぶった
あなたは胸を弾ませてくれた
本音の仮面をかぶった
あなたは優しくいてくれた
親友の仮面をかぶった
あなたは強く頷いた
本当にしたいことだった

化け物だった


優しさを愛せない自分を愛せない
愛せない自分を愛せない
誰より想っていたって
全部嘘だって私が知ってる
こころを愛せない自分を愛せない
あなたを愛せない自分を愛せない
一度でいいから
こころまで深く
繋がりたかった

化け物でした



化け物だった
化け物であった
昔からずっと
化け物だった
誰の心もほんとは理解できない
化け物だった
愛する言葉は選べた
化け物だった
ほんとにほんとだって信じてた
化け物だった
仮面にひっついた
肌も破った
化け物だった


化け物だった
あなたに見えない
化け物だった
誰にも明かせぬ
化け物だった
自分が一番
分かっていることだった

化け物だった

化け物だった



生き方を愛せない
死に方も選べない
ちょけていたってほんと
隣にいるだけの化け物
仮面を愛せない未来を愛せない
私の愛を愛せない
玉ねぎみたいに皮を剥いたら
全部なくなっちゃえばよかったのにな


すべてを愛せない
愛してるつもりの全部を愛してない
「アイ」ってなに
「アイスル」ってなに
大切にはきっとできてないな
愛せない……
一度でいいから
ほんとの言葉で
好きって言いたかった

化け物でした