雨に濡れる石畳
季節外れの酒場
言葉少なな旅人は
静かに杯を空けていく
卓を照らすランプ台
街道外れの宿場
娘のかすれた歌声に
静かに昔を懐かしむ
娘は歌う童謡を
毎晩同じ歌声で
露に濡れる窓ガラス
調子外れの雨音
言葉失くした歌姫は
静かに床をととのえる
闇を照らすロウソク
刻限外れの屋根裏
父の形見の人形に
静かに歌を響かせる
娘は歌う童謡を
毎晩同じ歌声で
繰り返される日常に
見果てぬ夢をあきらめて
忘れられない思い出を
ただ人形に歌うだけ
歌うことしかできなくて
歌う仕事を手に入れた
罪なき娘の人形の
よくある哀しい物語
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