樹縁

A
紅が舞う朽ち果てた世界で
佇む君はなにを思うのだろう
宝物を詰め込んだ箱さえも
固く閉ざされて開くこともない
B
確かにそこにあったものさえ
掌からこぼれ落ちていく
抗い守ることさえ出来ぬまま
まるでそれが運命だったように...

A
砕け散った硝子の破片
拾い上げてももどらなくて
欠片に映っている君は
一体誰なのだろうか
B
深く傷つけられて
見えない傷だけが増えていく
どれだけ時が経とうとも
痛みだけは消えなくて...

星崩れ落ちる下（もと）で
僕はただ独りオワリを見上げる
A
荒れ果てた世界と僕ら
夜空は何も変わらないのに
互いを傷つけ傷つきあい
この手はナニカを掴めたのだろうか
B
不合理に満たされた世界で
足掻き続けることで...

A
月の影さえも見放して
揺れる光蝋燭の炎
辺り満たす音楽だけが
私の世界のスベテだった

鏡越しに映った光
闇の中でしか見れないなら
甘美な言葉で惑わせて
こちらへ引きずり込んでしまおう...

「ああ、今宵も迷い人が来なさった」
A
皆（みな）で客を歓迎しましょう
響く笛の音鵺（ぬえ）が啼く
猫又は自分の皮を剥いで
作った三味線弾きましょう
B
さあ　踊れ　踊れ
私を捕まえてごらんなさい
早くしないとその無能な足...

A
重い雲に覆われた空
雲の切れ間から刺す光明
照らしゆくはどこかへ続く道
真っ黒な世界の中で
もしあなたが迷ったのなら
私が光を贈りましょう
B
どうして独りで泣いているの？
どうして独りで抱え込んでるの？...

夜空で舞い踊る
鳥になった夢を見た
あまりにも楽しくて
自由を手に入れた気がした
だけど目が覚めてみれば
僕はただの人間で
しがらみから
解放されることはないでしょう
でも
自分は鳥になる夢を見たのか...

A
遠く広がる空に
描いた夢は大げさ過ぎて
つかめるわけないことくらい
分かってたはずだったのにな
B
やりたいことしたいことに
自分から目を背けてた
今私に必要なのは
やらなきゃならないことだけ...

A
鏡越しに映った薔薇
触れようと手を伸ばして
あるはずない茨に触れ
伝う雫薔薇を染めた
信じることが難しい
偽り蔓延る世界
けど私は祈りましょう
信じることできるように
B...

どこか慌しげに去っていくあなたの背を
離したくなくて追いかけた
けれどその背に触れる前に
一瞬で崩れ落ちた
なんでもない日にHappy Birthday
ただ一緒にいられるのならば
どんな日々でも幸せで
どんな場所でも構わないのに
不思議の国に繋がる穴に堕ちていく
私が追いかけたのはあなただったのか...

月明かりに舞う漆黒の羽
不吉をばら撒いて
君まで傷つけた
堕ちていく君の身体
抱きしめていたら
僕まで墜ちてしまうと
こんなときまで他人（ヒト）の心配
馬鹿だね
僕の黒い翼が生えたら
君を連れて飛んでいってあげるから...

人溢れる室内は
うるさいくらい騒がしいのに
すべてはどこか遠く感じて
気づかれぬよう耳を塞いだ
今僕がいる世界が夢であって欲しいと
もう何度願ったのだろう
抜け出せない現実なんて必要ないのに
もしもこの世界に
人はいるのに誰もいないとして
色はあるのに黒白としていたとしたら...

何気なく生きてきた僕の人生は
他の誰かより特別なことなんてなかったかな
人の行きかう交差点で　不意に立ち止まり
青く澄み渡った空を眺めてみる
「いい気なもんだね」
上に向かって心の中で呟いた
つまらない戯言は空に届きましたか？
星が終わるとき
生きてきた証見せつけるかのように
光り輝く...