タグ:ポーシュリカの罪人
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「ミクが、生きている」
カイトの頭は、今やその一言に縛られていた。
フィステューゲン王国王女、ミクリアーナ・エリオ・イル・フィステューゲン。
カイトが愛した翡翠色の髪と瞳の少女が、冷たい土の中にあって尚生きているという推測は、カイトの思考を奪うのに十分だった。
「確実じゃない。でも、レンの態度や彼の...【オリジナル小説】ポーシュリカの罪人・10 ~夕日を背に受けて~
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玉座に腰掛けたミクに、レンが一礼した。
そして、歌が響く。
水鏡の向こうから、少年特有の澄んだ声が響き渡ってきた。
『その昔
魔物に怯え暮らしていた時代
雪深い王国に
一人の歌姫がいた』
カイトがその歌詞に眉を潜める。メイコはその様子に首を傾げるが、今は魔法を維持するのが精一杯だった。
『かつて彼女...【オリジナル小説】ポーシュリカの罪人・9 ~言霊使いと雪ノ歌姫~
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水鏡はまず、健やかに伸びる若木に似た緑と陽光に似た金を映した。他の全ては曖昧にぼやけているが、段々と像がはっきりするに連れてそれが2人の人間の髪の色だとわかった。
明らかに王侯貴族のそれと分かるドレスを纏う緑の髪の少女と、動きやすいデザインの従者服を着た金髪の少年が向かい合って立っていた。
「ミク、...【オリジナル小説】ポーシュリカの罪人・8 ~水鏡が映す風景~
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空が、赤かった。
泣き腫らした瞳のように朱く、飛び散る鮮血のように紅い。
太陽の断末魔のように、朱い紅い夕日は降り注いでいた。
赤光のカケラが、王を失くしたクロイツェル王国を染め上げる。
メイコ・シェオーリア・ルルフレーヌは、クロイツェル王宮のバルコニーから真っ赤な夕焼けを見ていた。
長い歴史を重ね...【オリジナル小説】ポーシュリカの罪人・7 ~革命の夕暮れ~
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《大獄》の街・アストレーラは、ポーシュリカにもありそうな石造りの街並みだ。
だが、その違いは足を踏み入れた途端に理解できるものだった。
「何これ・・・手が、勝手に・・・!」
リンはカイを風で威嚇していたが、彼女の意に反して手は風を還す印を結んでいた。レンのほうも、手が勝手に突き付けた短剣を下ろす。
...【オリジナル小説】ポーシュリカの罪人・6 ~《大獄》という世界~
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「レーン! おたんじょうびおめでとう!」
僕らのたんじょうびの朝、リンは僕のびょうしつに入るなりそう言った。
「リン、どうやってきたの・・・? まだねてるはずの時間だけど。」
「がんばっておきたの! だって、いちばんにおめでとうって言いたいんだもん!」
リンはいつものようにむじゃきに笑う。つら...【オリジナル小説】ポーシュリカの罪人・番外編 ~あくのふたごのたんじょうび~【お誕生日おめでとう!】
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「ハァ・・・ハァ・・・待て・・・話せば、分かる・・・」
「心臓貫いても・・・生きてる人と・・・」
「話すことなんて、ない・・・!」
手と手を繋いで逃げる双子と、胸を押さえながらそれを追う男。片割れのドレスを染めた血が、男の元へと戻っていく。それを見た双子の顔が同じ動きで引き攣り、声にならない悲鳴を上...【オリジナル小説】ポーシュリカの罪人・5 ~罪のカタチ~
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―――《大獄門》をくぐった先にあったのは、クロイツェル王国にもありそうな街外れの草原だった。
「なんか、普通だね」
ぽつりと言ったリンに、レンが頷くいた。
「新たに足を踏み入れし者達よ」
背後から掛けられた声に、二人は同時に振り返る。
「ここは《大獄》。私達は赦されざる罪人。幼き二人よ、汝らの罪は何...【オリジナル小説】ポーシュリカの罪人・4 ~堕ちた先には~
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アーダムリア教会の鐘が3時を告げる。絶対王政が斃れたというのに、その清らかな音色は変わらなかった。
その音色に呪縛を解かれたように、民衆はざわめきを再開した。
それを打ち消す、石が鉄を噛む音。
「・・・時間だ」
どこか泣きそうなそういったのは、短い茶髪に紅い鎧が鮮やかな女剣士だった。
その名を、メイ...【オリジナル小説】ポーシュリカの罪人・3 ~旅立ち~
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少女の右手を見た男の動揺が民衆に伝わるのに、さほど時間はかからなかった。
動揺の感情は不安を呼ぶ。
「王女と召使の区別もつかないなんて、貴方達は私の何を見てきたの?」
不意に、少女がそういった―――涼しげな声で、傲慢な口調で、召使の服を着た王女はそう言った。
「それは言い過ぎだよ、リン。父様も母様も...ポーシュリカの罪人・2 ~双子の罪人~
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「―――よって、クロイツェル王国王女、リンリィ・フィオナ・カシュー・ミラーシャサウン=ド=クロイツェミミンを《大獄》送りとする」
重々しい男の声が、判決を告げる。怒号・野次・歓喜も叫びなど様々な音が飛び交う中、判決を告げられた彼女は不敵な笑みを浮かべて佇んでいた。
魔法が存在する世界・ポーシュリカ。...【オリジナル小説】 ポーシュリカの罪人・1 ~半分だけの印~
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