タグ:死にたがりの君と生きたがる僕。
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覚悟は決めていた。
早く死にたいとも思っていた。
しかしそれは死とは無関係の場所にいる自分だからこそそう願ったのかもしれない。怖くはない。むしろ良かったのだと思っているが、ひとつだけ未練がある。
リンに出会うまでは無かった未練だがこういったカタチで死に逝くことが決まって、もっとリンと一緒に居たいと願...死にたがりの君と生きたがる僕。【6】
夏乃
変わりなんて一人もいない、沢山の仲間達。
かけがえのない大切な時間。
振り返れば傍にレンがいて、笑ってる。
いつも通りの優しく温かい笑顔を浮かべていた。
駆け寄ろうとしたけれど見えない壁に阻まれてそれ以上近付くことも出来ず、何度彼の名を呼んでもその距離は縮まることなく開いていく。
片手を挙げて、白い...死にたがりの君と生きたがる僕。【5】
夏乃
それは突然の朗報だった。
そろそろレンが起きてくる頃だろうかとカレンダーを見上げていたら、主治医がいつも通りの長い藤色の髪を一つに束ね、白衣を身に纏った姿で部屋に入ってきた。
縁なしの眼鏡をかけた顔は端正に整い、薄い唇から発せられる低い声には看護師患者問わず感嘆の息を漏らす―――らしい。リンにとって...死にたがりの君と生きたがる僕。【4】
夏乃
目を開けて、辺りを見回す。
夢を見ていた。
夢の中では自分の時間がごちゃごちゃになっていて、何故だか起きる度通っている病室の住人は少女がそこには居る。手を伸ばせば届きそうなほどの距離で、でも決して届かない場所で眺めている。そんな夢。
出会ったばかりの頃は確かに少女で、外見年齢は大体レンと同じくらいだ...死にたがりの君と生きたがる僕。【3】
夏乃
―――これは、夢だ。
レンは、目の前の光景を見るなりそう認識した。気付いたわけではなく、言うなれば、そうであることを“知っていた”。
そこはきらきらと輝いていた。
何処か遠く、このレンが知る世界ではない遠い世界で、それでもガラスの壁の向こう側にいる彼等は彼が良く知る彼等であり、同時に全く知らない彼等...死にたがりの君と生きたがる僕。【2】
夏乃
「死にたい」
私の命に期限がついた頃、彼は言った。
目の前の少年は特別仲がいいとか悪いとかもなく、この病院で出会ったただのトモダチ。
真っ白い病室のベッドの横、折りたたみの椅子に座っている。時折この橙色の髪の少年はこうして遊びに来てテレビで見たことや外出をしたときに見たもののことなど、なんてことない...死にたがりの君と生きたがる僕。【1】
夏乃