タグ「切ない」のついた投稿作品一覧(9)
-
夜を嬲っても
落ちた参列 君だけ置いて
飲み下した月が喉に落ちていく──
残光 残響 一瞬の閃光
朝靄に連れ去られた可惜夜の涙
燻り出された灰色に
埋もれた春の肋骨
蜉蝣は吐いた 「浮舟は何処に?」
空蝉の流れに逆らい
雲漏れ月の日脚を駆けて...月籠り
-
難しい言葉で語られた世界の
隙間に注がれた諦念を
集めて重ねて 引き裂いて
それでも水溜りは濁らない
悲しい憶いで紡がれた叙事詩の
白紙に込められた永遠を
開いて破って 引き裂いて
それでも月灯り 遣る瀬無い
憧憬に見せられたまやかしの
ざわめきに染められた頽廃を...頽廃はカタストロフィ
-
懐古の灰が注がれるとき
胸には銀の花が咲き
敬虔な日々が欺かれれば
慈しみさえ空虚でしょう
凡ゆる日々が愛を喪い
羨道辿る束の間を
夢のようだと微笑むならば
この痛みさえ明日の夜に
目蓋つんざく残光を
睫毛を撫ぜた弔いを...君が大人になる頃に
-
僕のいない世界が見たい
それはきっと美しい
腐った水槽洗われて
沈んだ白紙は溶け消えた
あまりに朽ちた草花も
どうやら実りはないようだ
僕のいない世界に期待
それはきっと美しい
暗く澱んだ溜息も
湿ったシーツの重たさも...僕のいない世界は美しい
-
幸福なあなたよ 死んでくれ
ただ君の胸にある生が
悲痛に踏み躙られることがないように
どうかあなた 幸福なあなたよ
幸せなままに 死んでくれ
平穏のままに 死んでくれ
微笑みとともに 死んでくれ
僕の隣で死んでくれ
幸せだと言ってくれるなら
どうかあなた 愛しいあなたよ...幸福な君よ、死んでくれ
-
脳細胞は諦めました
有象無象の夢想は許そう
ただし時計の針は戻そう
そういう規約を立てておこう
愛しさと食欲は似ています
悲しさと微睡みは似ています
瘡蓋と口付けが似ているように
空腹と淋しさは似ているように
僕は死ぬように眠りに就きたい
将来像は尽き果てました...きれいなせかい
-
大好き だから お別れをしよう
大丈夫 すぐに発つよ
お迎えが来たんだ 明日の向こう側から
今日から君が僕の心臓になる
春の陽射しのように 君を愛してもいいかな
夏の木漏れ日のように 君を愛してもいいかな
秋の日向のように 君を愛してもいいかな
冬の月光のように 君を愛してもいいかな
愛してる だか...お別れのうた
-
1.
言葉に埋もれたままの僕を
見つけてほしくて ひとり 星を眺めた
夜空にちりばむ あの一つ一つにも記号があるのに
この感情ひとつの 名前を知らないでいる
恋というには深すぎて
愛というには浅すぎる
この手で握られるのは
鉛筆とノートと それから君の手
2....名のない感情のうた
-
1.
彷徨った夜も いつか 乱暴な朝を迎え
暴力的な光の指に誘われるときが来て
昨夜読んだ悲しい本の 結末を反芻したりして
ああ
明日が来なければそれでいいと 蹲った闇は去り 僕は大人になった
月に指かけるように かけられるように 引き留めた夜は終わる
この眼はひとりだと くだらないことばかり眺めた...我儘