院出穣司の投稿作品一覧
-
いまだとどかぬ海の底
ひとしくのぞむか幽冥の果て
まだ足りない
キミを連れていくには足りない
加速する人間の最少要件
煮詰まる遺伝子の利己的行動
激化する仮初めの偶像崇拝
見失う一切の存在意義
然れども南無三宝、最早末法の世よ
弥勒(ミリク)はいまだニライカナイ...學天則
-
あなたは何も持っていないと云うの
世界のすべてを手のうちに転がしながら
あなたは何も知らないと云うの
宇宙の真理さえ見通すような眼差しで
あなたは何も持っていないと云うの
その実すべてを捨ててきたの
あなたは何も知らないと云うの
ほんとうは見ないふりをしてくれているの
病魔の名は無欲
あなたを貶める...ウアジェトの目
-
遥か蓬莱 ニライカナイから
行こう キミのもとへ
エビス ダイコク ビシャモン ベンテン
ごった煮の カミを乗せて
ホテイ フクロク ミク ジュロウジン
今行くよ キミのもとへ
生まれも過去も些細だろう?
今がある それだけ
ただこの唄で ことほごう
うるわし キミの前途を...八福神のうた(仮)
-
薄墨色の凍てつく夜気に
射干玉の髪を洗い
払い得ぬ甘い花の香に
遠い思い出を垣間見る
案ずれど夜明けは遠い
僕はまだとらわれたまま
紺青に凍える星を読み
洋々たる前途を祝す
たとえそこには切望の
ひとかけらさえ見えずとも...夜明けの虜囚
-
もう歩けない
遠くまで来たと思っていたのに
ただ釈尊の掌中
見上げれば通り過ぎたはずの道標が
風の中に揺れている
もう眠れない
明けぬ夜はないと聞くのに
中緯度の極夜
ありえぬ幻がひとびとを貪り
安寧の臥所は消えた...I can't do anything anymore.
-
夜半、遠くに不如帰
街角は月明りに凍え
春の修羅さえ大気に溶けて
瞬きほどの暗闇に憩う
夜半、近くに仏法僧
窓辺は星明りを帯びて
ぬすびとすら近寄らぬ場所に
世界の秘密を置いてきた
夜をのみほせ
あまねくひとしく覆いくる夜を...はじまりの夜
-
地図は焼かれた
磁針は奪われた
たよりは朧な記憶と
君が指すポラリス
醒めやらぬ西を嫌い
薄明の東へ
東風吹けどその香は
ただ異国の砂埃
君は遥か空の果ての
郷曲に心とどめて...最果てに憩う
-
深海底まで
鯨のように潜る
(Fauna of whale falls)
何も残らぬように
光も届かぬところ
シルクの泥
終焉と分解
五蘊を照らし見れば
深層の海流に満ちて
瞬きの如き二千年のうちに...竜宮