喜鳥

貴方は私の頭を優しく撫でる
そうすると何故か私は
先刻まで泣いていた事さえ忘れてしまえるのだ
あたたかい腕で抱き締めて下さい
死んでしまえる程に　　ほら強く
貴方になら殺されても良いなどと
けして言いません
貴方はきっと怒るのだろうから

此の画面の向こうに貴方が居るのかしら
こんな下らない文字列じゃ嫌
愛する貴方の声を聞きたいんだもの
此の機械の向こうに貴方が居るのかしら
ひび割れた声 無機質なノイズに邪魔されている
こんなものを望んでいた訳じゃない
気が付けば貴方に逢う事すら困難であった
何時の間に遠ざかってしまったの
貴方のとこ...

あたしの長い爪で
其の美しい肌を傷付けて
其の頚元に噛み付いて
其の頭を掻き抱いて
愛しましょう
可愛くないと云われても
仕方ないと思っている
正しい愛し方なんて知らない
だってあたしは子供なんだもの

貴方を愛してしまう事なんて
後悔はしていません
でも貴方は優しく嘘を吐くから
時々怖くなるのです
其の好きという言葉さえ
本物ではないかも知れないから
恐ろしい嘘で濡らさないで
心まで渇いて仕舞いそう
こんな私に依存などしないで下さい
何時無くなるとも知れない命です...

耳障りな動悸
何故顔が熱いの
貴方は何処にも居ないし
寂しいだなんて思っていない
空を見上げれば
心は満たされるんだもの
貴方を捜しているなんて
気の所為だわ

初恋の頃の衝動と...

君が走ってきて
「耳を貸して」
なんて言うから
少しドキドキしながら
耳に手を添える。
するとすぐ近くで
息を大きく吸い込む
嫌な音がした。
その後どうなるかなんて
容易に予想は出来たのだけれど...

消えてゆく　私が
やめて　止めて
まだ此処に存在(い)たい
消さないで　私を
私が居た証　軌跡
塗り潰さないで
私はまだ此処に居る
透明でも良いから
貴方の色に塗り変えないで
まだ確かに此処に有る...

此の忙しく流れる時間で
私は退屈を過ごすの
貴方の事を考えてしまうのは
きっと其の所為なのでせう
暑い中で冷えきってしまった此の手を
あたためて呉れる彼の手が恋しいだなんて
貴方は私に触れたいと謂ふ
其の真意が掴めない
私の頬に優しくキスをした
貴方は何を考えているのかしら？...

自分で言うのも何だけど　あたし優しくなんかない
だって貴方の事しか想っていないし　其れに…
知りたい事は何かしら　月の満ち欠け　其れとも…
嗟　緑の空が暗く沈んで
でも如何してかしら　全く寂しい気はしないし
貴方に空の色なんて判る？
あたしは四六時中　空を仰いでいる
明日はどんな天気になるのかしら
...

何時かは還るの
あの場處へ
其の時迄は
手を繋いで居てね
還ればきつと
分かる亊がある
[浮世は修行]

混沌の中で
貴方は見えぬ...