ハマるまいと思っていたボカロ曲にいろいろハマってしまった結果、自分でもびっくりな捏造設定小説が書きたくてしょうがなくなったので書き始めました← 読んでいただければ幸いです。
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緑春神殿。来る「春」に向けて、新しい「歌い手」を迎えた筈のその宮は、何故か混乱に陥れられていた。
「どういう事だ! なぜ一人しか見つからない!?」
神官の怒号。頭を垂れたままひたすらに謝罪を繰り返す神兵。
その中で異彩を放つ、どう見ても鳥籠としか思えない形状の巨大な檻の中で、きょとんとした表情のまま...世界に響くはその歌声。【???・2】
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部屋に戻ると、神武已は改めて琉香の踵の手当をしながら言った。
「暫くは歩くと痛むだろうな。朝の祈りには私が出よう」
「私も出ます」
「この足で、か? 歩かずにいた方が治りが早い。我慢しろ」
「我慢も何も朝の礼拝は仕事です。足に擦り傷くらいで休む訳にいきません」
ぷいと顔を背けて言い張る琉香に、神武已...世界に響くはその歌声【冬の歌・5】
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琉香の生活は、自分の部屋と祈りの間の往復だけで過ぎていく。元々身寄りが無く、神殿で幼い頃から育てられていた琉香にとって、日々の暮らしはそれで十分だった。
逆に言えばそれ以外の事を知らない。
それでいいと、思っていた。
…今までは。
はたと目を覚ましたのは、祈りを捧げ終えてからどのくらい経ってからだっ...世界に響くはその歌声。【冬の歌・4】
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「…眠ったか」
まるで琉香のそれがうつったかのように溜息を吐き、神武已は自分の胸に凭れた細い体を見下ろした。
まったく、この今すぐにでも折れてしまいそうな細い体のどこにあんな力があるのか。
「冬」は四季の中でも特に難度の高い季節だ。弱ければ気温が下がりきらずに植物は休眠せず、春の芽吹きの力を蓄えられ...世界に響くはその歌声。【冬の歌・3】
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私は神殿の一角で清掃をしていた。
今日も声楽の授業で居残りをさせられ、神官さまから溜息を吐かれた。
でも、楽譜通りに歌っているのに、及第点をくれないのはそっちじゃない。
頬を膨らませ、黙々と実習室の机を乾拭きする。
……嘘。
本当は自分でも解ってる。
授業以外ではあまり歌ってはいけないのだけれど、実...世界に響くはその歌声。【???・1】
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「お帰り。琉香」
そう言って笑った男は、琉香と並ぶ「冬の歌い手」、神武已(カムイ)だった。
驚いて立ち尽くす琉香を見て、その笑いが苦笑に変わる。
「迎えに来たのがそんなにおかしいか?」
その声が近づいてきたかと思うと、ふわりと足下が不安定になったような浮遊感を感じ、琉香は咄嗟に小さく悲鳴を上げた。
...世界に響くはその歌声。【冬の歌・2】
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歌声が 世界を 巡る 。
神殿の奥津城、祈りの間。
一人の女性が歌い続ける。
それは、季節を紡ぐ歌。
彼女の名前は、琉香(ルカ)。
司るは「冬」。
玄冬神殿の巫女にして、「冬の歌い手」筆頭の実力の持ち主。
彼女の歌声なくして、世界に冬は巡って来ない。
一日の祈り歌を歌い終え、力尽きるように祭壇に膝を...世界に響くはその歌声。【冬の歌・1】