歌声が 世界を 巡る 。
神殿の奥津城、祈りの間。
一人の女性が歌い続ける。
それは、季節を紡ぐ歌。
彼女の名前は、琉香(ルカ)。
司るは「冬」。
玄冬神殿の巫女にして、「冬の歌い手」筆頭の実力の持ち主。
彼女の歌声なくして、世界に冬は巡って来ない。
一日の祈り歌を歌い終え、力尽きるように祭壇に膝をつく。そんな自分を不甲斐ないと思いつつ、琉香は小さく溜息を吐いた。
重い体をなんとか引き摺るようにして祭壇を降りると、外界とこの祈りの間を繋ぐ扉の前で呼吸を整える。
ここから出れば、出迎えてくれている神官達がいるのだ。弱った姿を見せて、皆に心配を掛けたくない。
その一心で、浅く早い呼吸を無理矢理に落ち着かせた。
今し方まで立っていた祭壇を振り返り、ぼんやりと灯火に浮かぶもう一つの祭壇をその目で確かめて、自分に言い聞かせる。
大丈夫。あと、少しで、私の務めは終わるのだから。
ひんやりと冷たい石の扉は、琉香が指先で押すと、あっけなくその口を開いた。
歌を捧げ終え、祈りの間を出た琉香を迎えるのはいつも、世話を任されている神学校の女生徒か、玄冬神殿の神官だった。だから彼女は、いつも静かな笑みを浮かべて祈りの間から出る。
彼女が弱音や愚痴を吐く事はない。それはこの世界に暮らす全ての命への冒涜になる。
何故なら、彼女の歌に、今、世界の全てが委ねられているのだから。
その自負が、彼女の細い体を支える源。
そうしていつものように、務めを無事終えた安堵と達成感と、ほんの少しの見栄で疲労に蓋をして祈りの間を出た彼女は、いつもよりも暗い通路に眉を寄せた。
小さなランプが一つきり、いつもの神官が捧げ持つよりやや高い位置で柔らかな光を放っている。
「……?」
目をこらし、ランプを持つ腕を辿り、…息を呑んだ。
「お帰り。琉香」
思いも寄らない出迎えに絶句した琉香に、男はクスリと笑った。
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