「今日はリリアンヌの気分じゃないの」
王宮から2キロほど離れた場所(と言っても王宮の庭園内だが)に僕とリリアンヌはいた。
“プティ・シャトー” ⋯⋯、先代女王アンネが遺した小さな城館。
辺り一面にはあえて手入れをさせずに自然で牧歌的な庭園が広がっており、さながら古代ギリシャの理想郷アルカディアにでも降り立ったかのような錯覚に見舞われるほど美しく、長閑で、心安らぐ静寂が僕らを包んでいた。
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天使鈴さん
「今日はリリアンヌの気分じゃないの」
王宮から2キロほど離れた場所(と言っても王宮の庭園内だが)に僕とリリアンヌはいた。
“プティ・シャトー” ⋯⋯、先代女王アンネが遺した小さな城館。
辺り一面にはあえて手入れをさせずに自然で牧歌的な庭園が広がっており、さながら古代ギリシャの理想郷アルカディアにでも降り立ったかのような錯覚に見舞われるほど美しく、長閑で、心安らぐ静寂が僕らを包んでいた。
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悪ノPコメント
リリアンヌとアレンは双子ですが、現実ではあくまで王女とその召使という関係。
二人の間にある独特の緊張感(特にアレンが感じているもの)が、リリアンヌの王族ならではの「おままごと」を通して描かれている良い文章だと思います。
最後にふっと力が抜けるような展開になるのも秀逸です。
たるみやさん
◇◇◇
これは夢だ。
早々に彼がそう確信した理由は他でもない。宮殿の廊下に、本来ならばいるはずもないものがいたからだ。
加えて、窓ガラスも割れているというのに他の侍従達が騒ぎ立てている様子は無い。
目の前の事柄全てがあまりにも不自然だ。夢なのだろう。今、彼の前にいるこの「熊」は。
地を這うような低い咆哮。漂ってくる不快な獣臭。
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悪ノPコメント
他作品のテーマを軸にアレンの心情を描くというやや変化球ぎみな作品ではありますが、導入から展開まで、非常に惹きつけられる文章でした。
「悪ノ」ワールドのキーワードが散りばめられていて、わかる人なら思わずにやりとしてしまうのではないでしょうか。
「歴史に潰される」という表現が個人的には好きです。
万華さん
話をしよう。
その共同墓地は格好の遊び場だった。旧王都という街中では子供たちの遊び場は少なく、近場で人気のなく木々に覆われたそこは最適だった。
私が「彼女」に気付いたのは、ある日のこと。
かくれんぼの場所探しの最中、ある墓標の前の彼女を見つけた。その修道着は確かエルド派のものだ。
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悪ノPコメント
リリアンヌの後日談を描いた作品は他にも多くありましたが、その中でもストーリー性、文章力、オリジナル要素等のバランスがもっとも良くとれている作品だと感じました。
「名前」に関する考え方や反応を通して、各人物を上手く表現できていると思います。
なんというか本編に普通にあってもおかしくなさそうな物語です。
センリさん
プロローグ
興味深い事実は多くあるが実際に公表することのできる話はほんの一部だ。
その一部の中には真実を語っているとは言い難いものある。果たしてどのような形になるのか…私にも分からない。
現在、取材を進めてはいるが世に出すことは困難であろう物語を以下に記す。
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悪ノPコメント
本編にちょっとだけしか登場しないモブキャラから見た「悪ノ娘」の物語、という独特な作品。
実は「処刑人」を主人公としたストーリーというのは僕自身も考案していた時期があったので興味深く読ませていただきました。
ただもはや本編主要キャラよりも処刑人の方がメインとなっており、今回の規定から少し外れてしまっている気もしたので特別賞とさせていただきました。
総評
今回、様々な方の作品を楽しく読ませていただきました。
もう少し使われるキャラクターが偏るかと思っていたのですが、以外とバランスよく描かれてたな、という印象です。
入賞作の中にこそありませんでしたが、個人的にはシャルテット主軸のSSに印象深いものが多かったです。
また、執筆者の熱量を感じる作品も数多く、後半が露骨に駆け足展開となっていて「あ、これ6000字じゃ足りなかったんだな」と感じる作品もチラホラと。
その中でも採用された作品はやはり
・惹きつけられる導入部分
・飽きさせない展開と結末
・全体を通して雰囲気が統一されている
という基本的な部分がしっかりしていたと思います。
(もちろん、ギリギリで採用されなかっただけでクオリティ的な差はほとんどない作品も多数ありました)
読み手側に回る事で「悪ノ」ワールドが皆様にどう映っているのか、客観的に見られる機会にもなりました。
ありがとうございます。
これからも末永く「悪ノ娘」という作品や登場キャラ、そしてVOCALOID達を愛し続けていただければ幸いです。
悪ノP