少年は羊皮紙に書かれた地図を手に、探し物をしていた。
地図の上には赤い×印が付いている。どうやら少年の探し物はそこにあるようだ。
その地図は魔法の地図なので、少年が進むにつれて直線だった×印までの道が、カーブを描いたり、グルグル渦を巻いたり、かと思うといきなりジグザグ道へと勝手に変化してゆくのだ。
少年は地図を頼りに、しかし迷いつつ進むと、一面お花畑の場所に出た。
色とりどりの様々な花たちが少年に話しかけてきた。
「私たちをお探しですか?」
少年はうつむきながら悲しそうに首を振った。
すると、極彩色の蝶たちが集まってきて、少年に話しかけてきた。
「私たちをお探しですか?」
少年はうつむきながら悲しそうに首を振った。
優しく見送る花や蝶たちに別れを告げて、少年は先へと進んだ。
開けた草原へ出た少年に、美しい歌声で小鳥さん達が話しかけてきた。
「私たちをお探しですか?」
少年はうつむきながら悲しそうに首を振った。
軽やかに合唱する小鳥さん達に別れを告げて、少年は先へと進んだ。
賑やかな市場に辿り着いた少年は、花屋やケーキ屋、パン屋には脇目も振らずに、地図にある赤い×印目指して歩いて行った。
ようやく少年は赤い×印が示す建物の前までやってきた。そこは、サン・ピエトロ大聖堂を彷彿とさせるバロック調の建物で、どうやら本屋のようだ。
少年が建物の中に入ると、店内中の本達が話しかけてきた。
「私たちをお探しですか?」
少年は、店内中の本達の声には耳を貸さず、高まる気持ちに頬を赤らめ、赤い×印まで進んだ。
目的の場所に辿り着くと、地図の上の赤い×印が光りだした。
眩しい光の中に現れたのは・・・
色とりどりの花が咲き、花には蝶が舞い、青空に小鳥が伸びやかに飛んでいる。
そんな絵の描かれたレターセットだった。
「ぼく、これが欲しかったの!」
少年は眩しい笑顔でレターセットを買うと、一番伝えたかった想いをしたためた。
【お誕生日おめでとう!】
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