※主人公(語り部)は自作マスター
※英訳和訳は物凄く適当

以上を踏まえてどうぞ。






――I sing your love 4


 次は何を唄ってもらおうかな、なんて考えてながらパソコンを弄っていた、ある日のこと。

 「…――lalala…」
 ミリアムが控えめな声で、何かを口ずさんでいるのが聞こえた。
(…あれ?この歌、どっかで…) 
 自分も鼻歌を重ねながら記憶を辿る。答えはすぐに見つかった。
 これは――私が最初に聴かせてもらった、日和田のミクの歌だ。
 私がたまに口ずさんでいるその歌を、いつの間にかミリアムも覚えていたらしい。
(勿体無い…折角だからちゃんと唄ってもらいたいなぁ……)
 そして――私は思い付いた。


「――Cover?」
「そ。日和田のとこのミクの歌、ミリアムに英語で唄ってもらうのはどうかな、って」
 所謂“VOCALOID→VOCALOIDカバー”ってやつだ。
 オケもメロディーも既にあるから、私の仕事は歌詞の翻訳とミリアムの調声だけで済む(とは言っても、訳すのは簡単じゃないだろうけど)。
「……どう、かな」
「………」
 ミリアムは無言。
 そりゃそうだ、自分で曲も作らず、あまつさえ、自分の恋を進展させる為の道具の様に扱っている、と思われても仕方無いことを、私はしている。
「…確かにさ、これで日和田と接点増えたらな、って、思ってないって言ったら嘘になるよ」
 これも、本音。晒しておかないとフェアじゃない。
 その上で――私はもっと大事な本音を、ミリアムに告げる。
「でも。それは別っていうか、オマケ。何よりまず――私が、この歌を、ミリアムに、ミリアムらしく唄って欲しいと思ってる」
 じっ、と、私は真っ直ぐにミリアムを見つめる。直線を描いていたミリアムの唇、その両端が、僅かに持ち上がった。
「――OK,with pleasure」

 ――ええ、喜んで。

 そう答えてくれたミリアムの笑顔は、凄く、綺麗だった。



 それから、暇さえあれば辞書片手に歌詞を書いたノートと睨めっこを続ける日々が続いた。
 (余談だが、ミリアムが家に来てから私の英語の成績が上がった。校内模試の英語で私が10位以内に入れたのは、間違いなくミリアムのお陰だ。)
 日和田の歌詞をなるべく残せるように。尚且つ、ミリアムが唄いやすいように。
 大変だけれど、この作業は今まで以上に、とてもとても――楽しかった。


「――よっし、出来た!お待たせミリアム!」
 そうして私が数日掛けて訳した歌詞。
 それを歌として完成させていくミリアムもまた――今までで一番、楽しそうに唄っているように見えた。

「……lala,la――」
 ミリアムが最後の音を紡いで――唄い終える。しばらく、言葉が出なかった。
「……Master?」
「………」
「…Master?……Misora!」
「っへ!?あ、ご、ごめん」
 ミリアムが思わず私を名前で呼ぶほどに私は呆けていたらしい。
「…ごめっ……なんか、ちょっと、感動しちゃって」
 日和田には申し訳ないのだけれど――今この瞬間だけ、この歌が、私とミリアムのものになった気がして。
 今まで唄ってもらったどの曲でも味わえなかった達成感を、私は――私達は、味わっていた。

「ありがと、ミリアム。この歌、ミリアムに唄ってもらえて本当に良かった」
「You are welcome.」
「……あ、そうだ」
「?」
「これ――投稿しちゃ、駄目かな」
 今までミリアムに唄ってもらった歌は、著作権云々の関係で投稿するのは自重していた(まあ、そんなに上手く調声も出来てなかったし)。
 しかし今回はVOCALOIDオリジナル曲のカバーだから――
「日和田に直接訊く、…のは、流石にちょっとなー…」
「…Master, “Fear is often greater than the danger.”」
 澄ました顔でミリアムにそう言われた。
――案ずるより産むが易しって言うでしょ、マスター。
「……そうだね。よし、やっちゃえ」

 あっさりと悩むのをやめて、私はこのカバー曲を投稿することにした。
 ちゃんと元の歌は日和田のミクのものであることも表記したし、問題があったら削除する、という旨も添えた。
「……怒られませんように」
「I think your worry is needless fear.」
 ぼそりと呟いたら、それは杞憂だと思うわ、とミリアムに呆れられた。


 私達が、日和田の投稿したページに「ミリアムでカバーしてくれました!」の文と共にこちらへのリンクが張られているのを見つけるのは、それから三日後の話。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

I sing your love 4(自作マスターとミリアム)

前回コメント頂いて以下略、チキンです。未だにgkbrしてます。
今回から(面倒なので←)ワンクッションやめてみました。流石にここから読み始める方は居らっしゃらないだろうと思いまして…


そう言えば…前回思いっきり書き忘れてしまったのですが、
作中の“ミリアムは基本英語しか喋れないが、日本語を聴いて理解する分には大丈夫”という設定は、当然ですが捏造です。
VOCALOIDどころか某笑顔動画のアカウントも持ってないので、投稿事情とかも想像の範囲です…

適当すぎる英文など、もし何か間違ってたらこっそりと教えて頂けると嬉しいです。
…杞憂ってあれで合ってるんでしょうか。

それでは、読んで頂き有難うございました。
…何が恐ろしいってまだ終わらないってことですよ。ちゃんと続けられるんだろうか私……

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投稿日:2009/09/15 10:14:08

文字数:1,949文字

カテゴリ:小説

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