「月並みの塔とイデアの月」
照らしはすれど暖めることのない
崇高な月の光をこの胸に
見上げた夕さりの空をきわやかに分かち聳える無骨の塔
下生えの蔦(つた)がひたと絡みつき、小暗い御空(みそら)に塗(まみ)れ行く
身体(からだ)と意志とを脱ぎ捨てて
未完の景色に色を塗れ
誰もがまだ見ぬイメージで
光でできた洋琴(ピアノ)を弾け
空想の梯子を月に架け
容易に登る人達には
灰色の大地だとしても
その景色をただ見たいんだ
天蓋の月を掴める高さまで
我楽多(ガラクタ)ばかりを積み上げていこうか
能うかぎりの想像を重ねども
狂おしく美(は)しく輝いているんだ
手の届かぬものだからこそ
あんなに奇麗に映るのだ
手燭(てしょく)の炎が歩調に相揺れ、影は踊れども其は虚構
雨催(あまもよ)いの空、雲の切れ間から、四方(よも)の山には月の雫
科学の国、時間ばかり計り
思考の国、辛いくらい笑い
芸術の国、こぞって踊って
賽子(サイコロ)の出た目で進む世界
絵の描かれていない絵本の夢
六ペンスを咥え飛ぶ鳥よ
星になりて静寂の底の模造の街を照らしてくれ
天球の月に手が届く場所まで
仮象(かしょう)の青写真を数多(あまた)積もうか
世界を綾なす永遠の形象
それを絵に音に言葉に変えたいのだ
ラッタッタ歌えや闇の闇
欠けても煌めく妬(ねた)き月
手に入らないと諦めて挫けてしまえる幸せ
手に入らないと分かっていて諦められない不幸せ
天蓋の月を掴める高さまで
悲しみばかりを携えていこうか
白々と耀(かがよ)う温度のない光の中
叶わぬ夢だけが鮮やぐ
全て費やし建てた塔は
月に少しも届かないが
ふと見下ろしたその景色は
案外、奇麗で笑えるな
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