「ほら、着いたぞ」
ス、とネルがリンの家を指差し、そしてリンの方を振り返る。リンは申し訳無さそうな顔をして首を横に振った。ネルも何処か寂しげな表情を浮かべ、腕を下ろす。そしてレンの方を向き直った。
「うん、ありがとな、ネル」
「・・・何かあったら連絡しろよ。無理にお前が全て背負わなくても良い」
「分かってるよ」
フ、と微笑みながらレンが言うとネルはハァ、と溜息を付き、「全く・・・どいつもこいつも・・・」と呟いた。
「? 何か言ったか?」
「良いや、別に。それじゃ、私は此れで」
フルリ、と首を横に振るとそう言ってネルは自分の家の方向に走っていった。
「さて」
フ、と息を付きレンはリンの方を見据えた。不思議そうにリンは小首を傾げる。
「じゃ、俺も家に入るわ。リン、家の鍵有るか? リン、両親とは別々に暮らしてるから」
レンにそう言われ、リンはゴソゴソと鞄の中を漁る。そうして見つけた一本の鍵を大事そうにギュッと手の平で包み込んだ。その様子を見てレンは少しだけ不思議そうに首を傾げたが「ま、いっか」と呟いた。
「何か言いました?」
「いや、別に」
そう言うとレンは自分の家に入っていった。その様子を呆然と眺めていたリンだったが慌てて思い直すと鍵を開け自らも自分の家に入っていった。
「・・・・・・・・・・・・何だか変な感じ・・・」
リンはリビングを見てポツリと呟いた。知らない場所―少なくとも今のリンにとってはそうだが―なのに心の何処かで此処が何処だか分かっている。其れが妙に安心で、妙に怖い。
「・・・何て、言ってられないよね」
フゥ、と息を付くとリンは降ろしていた荷物を再び背負い、自分の部屋へと向かった。
「・・・あ」
部屋のドアを開いて、先ずリンの目に写ったのは真正面の窓から隣の家の部屋の中―しかもレンの部屋だ―が見えた事だった。レンはもう荷物を置いて一通り片付けた後らしく、制服からラフな格好に着替え終わっている。
リンは気付かずにいたがじっと見つめていたので目線に気付いたのだろう、レンは此方の方を向き、ガラリと窓を開いた。其れを見て慌ててリンも荷物を置いて窓を開く。
――あれ、何でだろう。何で私。何の躊躇も無く窓を開けたんだろう
「如何した? 何かあったか?」
「いっ・・・いいえ!」
まさかずっと見つめてたなんて口が裂けても言える筈が無く、リンは首を思い切り横に振る。
「そっか。なら良いんだ」
フ、とレンが微笑んだので、リンは自然と頬が赤く染まるのを感じた。
「何か有ったら絶対呼べよ。何時でも良いからさ」
ニコリとレンは微笑んだ。コクリ、とリンは頷く。
「ん。それじゃな」
そう言うとレンは窓を少しだけ開いたままにすると、部屋を出て行った。ストン、と膝を落とし、ペタンとリンはその場に座り込んだ。そして両頬を両手で覆う。熱くなっていた。
――あぁ、もう。・・・何で・・・何であの人を見ると顔が赤くなるんだろう・・・。心臓はドキドキ五月蝿いし・・・。胸は締め付けられてる様な変な感じするし・・・。何でだろう・・・。何故なんだろう・・・。・・・私は・・・あの人の事が・・・好き・・・なの・・・? あぁ、分からない分からない・・・。
その日、リンはずっと頭を抱えていた。
それから、数日後。リンとレンとネルは隣町の公園にいた。ヒュウ、と風が吹くと三人の髪を宙に踊らせた。
「・・・思い出さない、か・・・?」
ネルは小首を傾げ、リンに問う。フルリ、とリンは首を横に振る。そっか、と呟いてネルは公園の外にある道路を睨み付けた。
八年前、リンが事故に遭いそうになった場所、そしてレンが事故に遭い、感情欠乏になった原因の場所。
思い出せ、と言う方が酷か。
フゥ、と息を付いてネルは空を見上げる。空は青く晴れ渡っていた。さて、此れから如何する? と言おうとしたネルの言葉は小さな子供の
「おねえちゃん、ぼーるとって!」
と言う声に掻き消された。コロコロと転がってきたボールをリンが追い駆ける。ボールは意外と速く、リンが其れを捕まえた時、リンは道路に立っていた。そして、戻ろうとした時、
「リン、危ない!」
ネルの叫び声にリンは立ち止まった。そして、見えたのは猛スピードで此方に向かってくる大型車だった。
――轢かれるっ・・・!
そう思いギュ、と目を瞑ったリンを誰かが
ドンッ!
と突き飛ばし、次の瞬間。
グシャッ
何か柔らかいモノが轢かれる音がした。
恐る恐る目を開けると其処にあったのは・・・・・・
「・・・レン・・・!」
車の前の部分が不自然に凹んでいる大型車と、
血塗れで倒れている、レンの姿だった―――。
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