茶の間の襖を開け広げ
畳に影をつけてみた
敷居を跨いだその足を
白い所に置いてみた
若者を座敷に上げて
湯呑みに番茶を入れてやる
何でも知つてるふりをして
後を濁して語らない
途切れた会話を待つてたやうに
古時計の音が入り込む
身の上話を境目に
聞き手と話し手とを逆転させながら
床の間の障子を開け放ち
元気な風を入れてみた
鴨居をくぐつたその首を
暗い所に向けてみた
若者を向ひに座らせ
適当な謎をかけてやる
話を聞いてやるふりをして
曖昧な相槌を打つてやる
はぐらかされた答への隙間を
せんべいの音が埋めていく
手垢にまみれた昔話から
歯切れの悪い教訓を読み取りながら
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