西の国で歌声が途切れてから幾年か後の話です。
「今日はどこに行こうかな?」
「今日はどこに行こうね?」
顔を見合わせて微笑む、鏡合わせのような顔(かんばせ)の二羽の金糸雀。
無邪気で少し威張りんぼうな姉と心配症で生真面目な節がある弟。そして二人揃って好奇心旺盛なところが玉に瑕。
歌が大好きな二羽の金糸雀はいつも二人で歌声を響きあわせていました。
「南の森は行ったかしら」
「東も南も北も行ったよ」
「じゃあ後は西の森だけね」
「…西の森は駄目だよ。魔物が棲んでるってきいたもの」
『西の森には歌声を無くした魔物が棲んでいる。
無くした歌声を欲して、西の森に来た者を襲うという』
旅人から聞いた噂話を弟は語りました。
「…わかったわ。じゃあ今日は東の森でお昼寝しましょう」
微笑む姉に弟は安心して頷きました。
「じゃあ行こう…」
弟が安心して力を抜いたその隙に、繋いだ手を引き走り出す姉。
「お馬鹿さんね、そんなものがいるなら行くに決まってるじゃない。楽しそう♪」
はしゃぐ姉に狼狽える弟。
こうして二人は気ままに暮らしていました。
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