「リン。君にお願いがあるんだ」
「何ですか?」
リンが小首を曲げる。
「君の電源を切らせてもらいたい」
「…え?」
博士はリンに飽きてしまったのだろうか…。
リンが失敗作だから…?
ビーカーから取り出されて、
大きな椅子に座っている今でも、
リンの体内は錆びつかない。
リンには理由がわからないよ…。
リンに≪ココロ≫がないからかな…?
「僕は、もう長く生きられないから…」
レデンが切り出す。
「リンには未来で待っていて欲しい」
天才学者レデンが誰にも見せたことがない
顔をする。
今にも涙が溢れ落ちそうな、弱い顔。
何て顔をするんですか…博士。
リンは…分からないです。
分からないのに…何故か涙が止まらない。
リンは言いました。
「リンは待ちます」
リンが次に起きた時、
どんな形でも博士に、また会えるなら。
リンは信じて待ちます。
「博士」
リンは、
ずっと言いたかった言葉があります。
たくさん、たくさんあります。
やっと今、言える。
プログラムじゃない、本当の言葉。
伝える、アナタに。
ありがとう。
アナタが私を生んでくれて、ありがとう。
ありがとう。
一緒に過ごせた日々を、ありがとう。
ありがとう。
アナタが私にくれた全て、ありがとう。
それでも伝えきれない。
けど、アナタに伝えられた。
たくさんのありがとう。
しばらくして静かに目を閉じると、
電源のランプがゆっくり消えていった。
「此方こそ、ありがとうリン」
レデンは彼女の頭を優しく撫でる。
「そして…ごめんなさい」
首の後ろに刺さるチップを引き抜く。
この記憶を保存しておく機密チップを、
シュレッダーに捨てる。
例え、また生まれ変わったとしても、
もう、リンは自分を覚えていない。
それでも、
リンには新しい生き方をして欲しいから。
電源ケーブルは挿したままにしておく。
こうすれば自分の意思でいつでもリンが、
目を覚ますことができるから。
これが最後に僕がしてやれること。
僕が唯一残せる、優しさ。
僕が我慢すれば済む話。
今日、命尽きる僕には関係ない話。
此処から先は他の人に託して、
僕は燃え尽きるんだ。
レデンはまだ光を残すビーカーに
寄りかかるようにして、
音もなく、眠るように息を引き取った。
それから数分。
国認開発者のサイレイがラボの扉を開く。
その背後には、
浅葱色の長髪を二つに結わいた娘と、
純白の長髪に緩く三つ編みをした娘。
そして透き通る銀髪を下方に二つ結わいた、
娘がいた。
「…レデン博士」
彼女はレデンが初めて創り出したロボ。
≪UU-092(ユカリ)≫が、
サイレイによって作り直されたものだ。
電源を切ってあるにも関わらず、
リンの体は成長し続け、髪は伸びた。
誰かの声が聞こえてくる。
ココロ~最初で最期の発明~
自分が展開する「新幕ノモノガタリ」の一部として、
トラボルタ様の「ココロ」から自己解釈で独断に、
「ココロ~最初で最期の発明~」を書かせて頂いております。
そちらの最終回かつ公式に発売中の小説「ココロ」に続くまでを
投稿させて頂きます(`◇´)ゞ
リン/鏡音リン
レデン=マーレドオル/鏡音レン(小説のロボになる前世)
UU-092/結月ゆかり
浅葱髪ロボの娘/初音ミク
純白髪ロボの娘/IA
サイレイ/SAIYA先生〔オリジナル〕
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じっと僕らを見つめている
ああ、音楽が溢れてく!
ああ、音楽が流れてく!...ああ、音楽が
ニワノワニ
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暖かい風に 揺れる遥か彼方
知らないし 僕の命の美しさ
冬の景色は つまらないで 、
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とある片隅 君と縁を結んだ時、
嗚呼 なんて素晴らしいで 、
冷たい冬の天気に...幸せな季節
アナミヤ
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