「遺跡に訪ねて来る者達からこの国の噂をよくきくんだ。
皆、この国が大好きだと口を揃えて言う。
きっと貴女が思っているより、この国の皆は貴女を大切に思っているんだろう。
そうでなければきっと皆、違う国に移り住んでいたんじゃないかな」
魔法使いは女帝に微笑みかけました。
「私に叶えられない願いは、願う者が自分達の力で叶えられるものだ。
貴女の病は心の病。歌声は貴女の心が安定したら自ずと戻るもの…。
一人で抱え込まずに、皆の力を借りていくと良い」
魔法使いは鳥籠に近づき、中から瀕死の金糸雀を出しました。
短い呪文を唱え手を翳すと、紫色の煙が金糸雀を包みました。
「危うく死んでしまうところだったね。間に合って良かったよ」
魔法使いは微笑んで姫君にそう言いました。
煙が消え去ると、もがれた羽根も元通りになった金糸雀がすやすやと眠っていました。
「ありがとうございます!魔法使いさん。なんとお礼を申し上げたら良いか…!」
姫君は涙ぐみながら魔法使いに頭を下げました。
「礼には及ばないよ。君には対価を払って貰う約束だからね」
魔法使いは姫君に短くウィンクしました。
「はい!」
姫君は微笑んでそれに頷きました。
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