「んーどーしよー」
リンが電子マネーの残高を睨みながら唸っている。
「なんだよ、買い食いのしすぎか?」
からかい口調でレンが口を挟むと、リンはがっかりするような台詞を言う。
「ねーレン。お金貸してー」
今月は色々と買いたい物が多く、気づけばリンはおこづかいが足りなくなってしまったらしい。
「やーだね。オレ、新しいゲームソフト買いたいし」
計画的に使わないお前が悪い、とレンは断る。
「むーっ! MEIKO姉に来月のおこづかいの前借り頼んでみようかなぁ」
「無理だろ無理。諦めろ」
オレも前に断られたことあるし、とレンはリンを諭す。
「あ、兄貴の手伝いすれば?」
手伝い1つあたり、チョコ・飴一個分ぐらいのお駄賃をくれるらしい。
「安っ! てかアンタやったことあるの?」
「まー色々?」
新しいゲームハードを買う際、その月のおこづかいでは足らず苦労したらしい。
最後はカンパしてもらってオレはお金の大切さを学びました、とレンは遠い目をしている。
「つーことで、諦めろ」
「まだまだっ! 交渉のあてはあるっ」
「え、リンちゃん、おこづかいが足りないの?」
ミクにきょとんとした表情で返されてしまった。
オシャレ好きなミクなら、気持ちを分かってくれるだろうとリンはふんだのに。
「み、ミク姉はおこづかい足りなくて、困ったことないの?」
予想外だった、とリンは焦りつつ尋ねる。
「んー前はあったけど……あ。ミクね、最近おこづかい帳つけてるんだ!」
みてみて、とミクは可愛らしい通帳型のおこづかい帳を引っ張り出してリンに見せてくれる。
「……ひゃく、せん、まん……うっそー! すっごい、ミク姉小金持ちだ!!」
こんなに貯まってるなんてきっと貰ってる額が違うんだ、とリンは唇を尖らせる。
「そんなことないよ。ミクだって足りなくて赤字になることよくあるもん」
「でも貯金、一杯あるじゃん!」
リンの指摘にミクはいわれてみれば、と困惑した表情になる。
「えっと……でも赤字で……?」
「赤字じゃないじゃん??」
首を傾げあうミクとリンに助け船を出すように、ルカが尋ねる。
「リンお姉様は貰ったおこづかいを、月ごとに使い切っておられるのでは?」
「え。だって、今月のおこづかいでしょ?」
リンがいつも月末になると買いたいものが買えなくて困るのは、おこづかいが少ない所為だと思う。
「では、先に貯金分を取り分けてないんですね」
ルカの言葉に、リンはきょとんとして瞬きを繰り返す。
「月のおこづかいでは足りないほどの高いものを、買いたいときもありますよね?」
レンが先ほど言っていたゲームハードのケースを思い出して、リンはうんと頷く。
「そういった特別な出費に供えて、事前におこづかいから貯金として取り分けておくのです」
「えーっとつまり?」
「貰ったおこづかい全てが今月の分ではなく、貯金分を除いた金額が、今月使えるおこづかいとなります」
仮にレンがおこづかいを毎月5,000円貰っているとしよう。
レンはゲームが好きで、ハードもソフトも自分のおこづかいで買っている。
ゲームハードは高くてひと月のおこづかいでは足りない。
なので毎月1,000円づつ貯金し、1年で12,000円をハードを買うために貯めておくことにする。
だが、残りの4,000円ではゲームソフト1本買えない事が多い。
なので、ゲームソフトは二月に1本で我慢するか、貯金分を取り崩し『赤字』で買うことになる。
このため、実際1年あたりの貯金額は5,000~10,000円ぐらいだろう。
それでも続ければ、2~3年ごとにでる新しいゲームハードを買うための貯金はできる計算になる。
「そ、そうなの! ミクのは使い切っちゃって全然ないの方の赤字じゃないの」
「な、なるほど……」
ミクはほっとした様子で相づちを打ち、リンは打ちのめされる。
ルカはリンに柔らかく微笑み、付け加える。
「先に取り分けておくのがポイントだと、MEIKOお姉様がおっしゃってました」
残った分を貯金に回す方針ではつい使い切ってしまい、なかなか貯められないらしい。
ワタシも付けています、とルカも恥ずかしげに手帳と一体型のおこづかい帳を出した。
「みんな計画的に使ってたんだねぇ……」
無計画なのはアタシだけだったか、とリンは項垂れる。
「僕はわりとどんぶり勘定だけどねー」
話を聞いたKAITOは棒アイスを囓りながら答える。
仲間がいた! と目を輝かせかけたリンだったが、いや待てと思い留まる。
「コイツは、細かく記録つけてなくても、予想収支計算大体あってるのよ」
MEIKOの言葉にそんなことだろうと思った! とリンはふて腐れる。
「電子マネーは残高がわかるから、一見記録を付けなくても良さそうでしょ?」
後日払いのクレジットも通帳などで確認でき、現金のような紙幣でも財布の中身を把握できていれば同様だ。
MEIKOの言葉に、リンだけでなく、ミクやルカ、レンも頷く。
何だかんだできょうだい全員居間に集合し、話を聞いている。
「でも、リン。今月何にいくら使ったか覚えてるかしら?」
「えぇと――」
リンは思い出そうとするが、遡れば遡るほど曖昧になる。
「まずは自分が何にいくら使ってるか、知ること!」
「一番はやっぱり食べ物や飲み物だろうねぇ。形に残らないからついつい使い過ぎちゃうんだよね」
もう一本アイス食べたいなぁ、とぼやくKAITOに言われると何となく納得できる。
「でもいちいち記録付けるの、面倒くさいよー」
おこづかい帳の項目を見てリンは項垂れる。
おやつやジュースの買い食いなどの『食費』。
好きなPの音楽やゲームやマンガに使う『娯楽費』。
オシャレのための『衣服・美容費』。
プレゼントを買ったり、みんなで外での食事や遊びに行ったときの『交際費』。
その他文具など細かい『日用品費』や、勉強のための『教育費』。
滅多に買わないような大物は『特別費』などなど、項目別に記録を付けなければならない。
その上、その月のおこづかい額と、使った額の合計、差額も記録する必要がある。
こんなに沢山だなんて! とリンには、三日坊主で終わる自信がある。
「そうだ! 電子マネーなら、過去の記録が残ってるじゃん!」
アタシってば頭イイ! と浮かれたリンに、MEIKOが釘を刺す。
「でも古い記録から消えてくから、自分で記録整理しておかないと、何にいくら使ったかは把握できないわよ」
「な、なるほど……」
例えばリンがおこづかい帳を付け、おやつに多くおこづかいを使っていることが把握できたとしよう。
結果を受けて少しおやつを買うのを我慢し、赤字を防げればおこづかい帳を付けた成果になる。
また、おやつを我慢してもおこづかいが足りないことがわかったとする。
レンのように、おこづかいを増やす方法を検討する材料にもなる。
「別に1円単位まで記録する必要はないんじゃないかなー」
もう一本アイスを食べるの諦めて、お菓子作りを始める様子のKAITOが言う。
「どゆこと? KAITO兄」
「毎日細かく記録するよりも、週1回10円以下は四捨五入ぐらいのゆるーい気持ちで付けた方が続くらしいよー?」
そうなの? とリンは、お菓子のできあがり期待して待っているミクとルカに話を振る。
「ミクは、一の位切り上げてるよ」
「ワタシは、5円単位で記録してますね。あと衣服と美容は別項目に分けています」
マイルールでも一貫して記録すれば、おこづかい帳の付け方は自由だ。
「でも、アタシにできるかなぁ」
渋るリンに、KAITOの手伝いを買って出たレンが台所へ行く通りがかりに呟く。
「オレも、記録つけ始めようかなー」
レンにまでいわれては、リンも負けじと始めないと、という気になる。
「そうだ、MEIKO姉は何に記録付けてるの?」
「最近はネット上で記録を付けられるソフトを使ってるわ」
ミクやルカが使っている冊子型以外にも、ネット上で簡易におこづかい記録を付けられるツールもあるようだ。
他にも、レシートや明細など残る形で記録を貰い、項目別に箱や袋に溜め、暇があるときに記録をまとめる方法もあるらしい。
「アタシにあう方法はどれだろー」
調べつつ悩むリンに、ミクは思い出して声をかける。
「そういえば。リンちゃんは、何が買いたかったの?」
「KAITO兄の、誕生日プレゼントー」
「「「「あ」」」」
「え、なに?」
台所からKAITOが呼んだ? と顔を出し、残るきょうだいは慌てて首を振った。
2月は何かと予算が足りない時期なようで、おこづかいは計画的に。
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BPM=200→152→200
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