―冬の寒さの名残を微かに含んで吹く春の風。



俺の名前は鏡音レン。 先日、大学に入学したばかりの18歳だ。

そして、今日は大学生活で初めての休日であり、待ちにまった“約束の日”。

期待にはやる鼓動を抑えながらも足の速度は緩めずに、俺は「相棒」である猫のミクオ(通称はクオ)と共にある場所へ向かった。


俺とクオ…お互いの想い人が待つ『約束の場所』へ……。


俺がクオと出会ったのも…俺達が「彼女達」に出会ったのも……。


これは俺がまだ中学生だった頃の話…4年程前に遡る……。








【4年+数か月前】
 

―俺がクオと出会ったのは中学1年生の頃。


クオは、元は捨て猫だった。


学校からの帰り道、聴こえてきた微かな鳴き声を辿って行った人気のない路地…そこに、飢えと寒さですっかり弱っていた子猫のクオがいた。

クオは、餌も毛布もない簡素な箱の中で力なく横たわって鳴いていた…まだ生まれてそんな日も経っていないであろう子猫が、だ。


考えるのも嫌になるが、世の中にはそう言う事をするクズな人間もいる。


どうすべきか悩んだ末に、俺はクオを家に連れ帰って両親に家で猫を飼う事を飼う事を必死に懇願した。

父さんのとりなしもあって最初は苦い顔を浮かべていた母さんも、俺の誕生日とクリスマスのプレゼント2つを併せた物が「猫を飼う」という形にする事で首を縦に振ってくれた。
まぁ…まだ中学生の身であった当時の俺にとってはかなりの痛手でもあったがこればかりは仕方無い…(と何度も自分に言い聞かせたのは秘密だ)。



―そして季節は巡り、冬から春へとなり、俺は中学2年生になった。





【4年前】


まだまだ大人の領域には達してこそいない物の、すくすくと大きくなっていくクオ。

黄緑のシンプルな首輪をし、毛色は顔と背中から尻尾にかけて立派な灰色地に黒のトラジマで構成されたクオは中々の男前だった。

(猫に男前という言葉が当てはまるかは知らないが)



そんなクオも、家に来たばかりの頃はアヒルの子供の様に俺について来た。

おぼつかない足取りでついて来るのは嬉しくもあるが、何とも危なっかしかった……。

クオの為に仕方なく始めた週一単位の散歩も、今では生活の一部として完全に定着している。


(最初の頃は犬なら兎も角、猫を散歩に連れ出す人など余りいないから通行人に微笑ましい目で見られる度に何とも言えないむず痒さと恥ずかしさを覚えた…まぁ、今は慣れたけど…)




春の暖かい日が差すある日。クオとの散歩をいつも通りしていた時、偶然、通りかかった公園で俺は…いや、俺とクオは「彼女達」に出会った。


桜の花びらがひらひらと緩やかに舞い散る中、ベンチに座り、穏やかな微笑を浮かべながら自分の膝の上で眠る真っ白な毛並をした猫を優しく撫でる少女の姿……俺達が見たその光景は、まるで一枚の色彩画の様に綺麗だった……。


―…今思えば、その時にクオはその白猫であるリンに、俺はその少女…ミクさんに、一目惚れしていたのかもしれない…。

   (続く)

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巡る季節、巡る想い(1)

初めまして、祭り猫と申します。
名の通り、「お祭りが好きな猫好き」です。

シブに上げている、ボカロで好きなCPレンミクとクオリンが好きで、レンミクが飼い主、クオリンが飼い猫と言う、何ともカオスな設定の小説をこちらでも上げさせて頂きます。

宜しくお願いします!

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投稿日:2012/05/05 21:34:49

文字数:1,339文字

カテゴリ:小説

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