※続きです
※レンリン要素あり(少なくとも作者はそのつもり)
※幼馴染設定

以上を踏まえてどうぞ。





「――ねぇ、レン」
「…何だよ」
「キスしよっか」
 ――空気が、張り詰めた。


――例えばこんな幼馴染。2


「は……はあっ!?」
 遠慮無く素っ頓狂な声が上げられた。そんなことにはお構いなしで、あたしはあくまでも冗談を言うように、続ける。
「いいじゃん、どうせ今はお互いフリーなわけだし」
「そういう問題じゃ――」
「あたしとじゃ嫌だっての?」
「そーじゃなくて」
「ヘタレン」
「うるせぇ!」
「いーじゃない、練習だと思って」
「――分かったよ」
 と、急にレンの声のトーンが落ちた。
 レンがあたしの肩を掴んで自分の方を向かせて、す、と顔が近付いて。
 え。うそ。
 思わず目を閉じた瞬間。額に何かが触れ――た気がしたと同時に、同じ場所に衝撃。
「ったあ!?」
 見開いた目に入ったのは、デコピン直後の形のままの手と、ニヤリと笑ったレンの顔。額には地味な痛み。
「何すん――」
「こーゆーのは“好きな人”の為に取っとけばーか」
 そう言って、何事も無かったかのようにレンは再び歩き出す。

 そんなこと――なんで、アンタに言われなきゃいけないの。アンタが誤魔化したその額へのキスに、どんな意味があるか知ってるの。

「…バカ」
 立ち止まったままのあたしに気付いたレンが怪訝そうに振り返る。その胸倉を、思いっ切り掴んで引き寄せた。ぎゅっと瞑った目から涙が滲む。
 一瞬でいい、形だけでいい、だから今だけ――二人を“友情”じゃなくて“愛情”で結ばせてよ。

 乱暴に、ぶつけるように。
 唇を、唇に重ねた。

「なっ、おまっ――」
「なんでわかんないのよ、アンタでいいの!アンタじゃなきゃ嫌なの!!」
「っ、それ」
「好きな人の為に取っとけ!?何言ってんのよあたしが好きなのはアンタなのよ!」
 関係が壊れる壊れないなんてもう考えられずに、あたしは捲し立てる。滲んだ涙が溢れて頬を伝う。喉が詰まって上手く喋れない。
「レンのバカ!なっ…、なん、で…っ、こんなの…こんなのズルい…っ!なんで、あたしだけ、変わっちゃうのよ…!」
 途切れ途切れになりながらも、あたしは言葉を吐き出した。
「リン、落ち着けって。……なあ、リン」
「…な、によ…っ」
「お前今……お前が好きなのは…オレ、って、言った?」
 歯切れ悪く言われたその言葉。とたんにすぅ、と頭が――そしてついでに心臓の辺りも――冷えた。
 あーあ。
 終わりか、この何だかんだ言って心地良かった関係も。
「…言った、わよ?」
 精々最後まで強がってやる。
「だよな?言ったよな?聞き間違いとか幻聴とかオレの妄想じゃないよな?事実だよな!?」
 ずらずらと並べられる疑問符。そこまで確認するほど嫌だったなんて……流石に、ちょっとショックだ。
 しかも妄想とまで――え、“妄想”?
「…ちょっと、なんで妄想が並んでんのよ」
 思わずいつものノリでツッコんでしまった。
 そりゃ、混乱するくらい嫌なのは分からないでもないけど――と、小さく零したら。
「誰が嫌だなんて言ったんだよ」
 しっかり拾われてしまった。そうだ、そりゃあ、言わせる隙が無かったとはいえ、レン、嫌とは言ってないし、それどころか寧ろ――嬉し、そう?
「だって、すぐには信じらんないだろ、フツー。自分がずっと好きだった奴が、自分を好きだなんて言ってきたら」
 ……。なんですと?
「…いやいや、こんな陳腐で溶けそうなラブソングみたいな展開ありえない」
「陳腐で悪かったな。あと全世界のラブソングとそのリスナーに謝れ」
「……何これ、あたしの妄想?」
「ほら、やっぱそう思うだろ」
 さっきのデコピンの後と同じ、してやったりなニヤリ顔でレンは言う。ついでに額にはまだうっすらと痛みが残っている。ということは、これは夢じゃない、ってことで。
「じゃあ…あたし、レンに嫌われてない、ってこと?」
「……違わないけど正しくない。なんでそんな微妙な言い回しなんだよ」
「だって」
 それだけで充分なのに、あまつさえ両想いだなんて、そんなの贅沢にも程がある。
「お前さ、変わったのは自分だけだとかなんとか言ったクセに、自分から線引いてないか?」
 レンがうんざりしたように言う。確かにそうかも――なんて、思っていたら。
「…変わったのはお前だけじゃねぇんだよ、ばーか」

 胸倉じゃなくて肩を掴まれて。
 目は閉じるどころかびっくりしたせいで見開いてしまって。
 でも、触れ合ったのは――さっきと同じ、互いの唇。

「……これでも、信じらんないワケ?」
「だって。ちゃんと、レンが『好きだ』って言ってくれるの、聞いてないもん」
「……っ」
「…何よ、あたしには言わせといてアンタは言わない気!?このヘタレン!」
「はぁ!?お前は勝手に泣き喚いただけじゃねーかよ!」
「ああもう!レンなんか――」
「大好きだ」
「っへ!?」
「ほら、言ったぞ」
「ちょっ、そんな、この流れで言う!?」


 一瞬じゃなくてこれからずっと。形だけじゃなく心から。
 二人を結ぶモノが、名前を変えた。


 ――Fin.

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

例えばこんな幼馴染。2(レンリン)

 という訳で、初小説、初レンリンです。
 実は部(文芸部)に出す原稿の元ネタだったりします。
 これを元に、名前を伏せまくってどうにかオリジナルにして書き上げました(笑)

 ちなみに知ってる方もいらっしゃると思いますが、
 額へのキスは友情、唇へのキスは愛情、の意味はグリルパルツァーの詩を元にしています。

 それでは、拙い文を読んで頂き、有難うございました。

閲覧数:745

投稿日:2009/08/07 13:58:44

文字数:2,161文字

カテゴリ:小説

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