6.
 それからの僕ら二人は、順風満帆とは言い難くても、トータルでは忙しくも幸せな日々を過ごせたと思う。
 ……余談だが、ラストライブの夜、僕と初音さんがお互いの想いを打ち明けた様子は、メイコさんとルカさんとリンさんの三人にバッチリ見られていた。
 後日、三人に問いただされた初音さんは本当に頭から火が出そうな勢いだった。
 とはいえ、三人とも初音さんと僕が付き合うことをとがめるというよりは「やっとくっついたよ」という呆れがはいっていたけれど。
 僕は全然気づいていなかったーーみんなに「ニブすぎる」と責められたーーのだが、初音さんと僕がお互いを意識しているのは一目瞭然だったらしい。
 高松社長によれば「ファンですら気づいてた」らしい。そんなバカな。
 ……ともかく、CryptoDIVAが解散し、アイドルを卒業した初音さんは、CreatePrimeのアイドル部門統括として、表舞台には出なくても現役の時以上の活躍をしたと言っても過言ではないくらいの実績を残した。
 最終的に、彼女がプロデュースしたアイドルグループの数は二十を超え、まぁ……その全てが大成功したとは言い難いが、それでも多数の売れっ子アイドルを輩出した。
 それに伴いCreatePrimeの会社規模も拡大し、ほどなく初音さんは執行役員の一人に名を連ねることとなった。
 僕はといえば、アイドル部門統括の秘書の仕事もあったのだが、初音さんと高松社長を説得して、三十手前になってから大学に入学した。
 CryptoDIVAの解散後、高松社長は芸能プロダクションとしての会社規模拡大を目指そうとしていたのだが、そこで経理担当による会社の金の着服が発覚したのだ。
 経理の人間を増やしたことと、CryptoDIVAによる収益がなくなり、会社の利益が落ちたことにより、長年の着服が表面化した形だった。
 高松社長は元バンドマンだから……かどうかはわからないが感覚型の人間だ。初音さんも当然ながら感覚型で、二人とも人件費や設備費がどうとか利益がどうとかわかるわけがなく、そうなると当然ながら利益を把握できるわけがなかった。その人以外に会社のお金の動きを理解している人がいなかったのだから、それまで着服が露見しなかったのも当然と言える。
 今後、その問題を放置し続けるくらいなら、執事としての業務から開放されて仕事量の減った僕が、経営、経理、会計、財務について学ぶのが……遠回りだったとしても最終的にはプラスになるだろうと思ったからこその選択が、僕の大学入学だった。
 初音さんの秘書としての仕事もこなしつつ、なんとか六年で経営学部を卒業した僕は、CreatePrimeの経営にも参加することとなり、結果として僕もまた執行役員に名を連ねることとなった。
 CryptoDIVA解散から二年後、僕がまだ大学三回生になったばかりの頃に、僕と初音さんは結婚した。
 なんというか……僕は相変わらずヘタレなままで、業を煮やした初音さんの「ボクも我慢の限界ってものがあるよ」という言葉が結婚の直接的なきっかけだった。
 二人で話し合った結果、僕が「初音」という姓を名乗ることとなった。
 公に公表はせず、式も身内と社内のメンバーだけで簡素に済ませた。
 僕はもっと大々的にやってもいいんじゃないかと思ったのだが、初音さん自身はプライベートなイベントは知り合いだけで十分だったらしい。
 そうして僕の名前は、初音奏となったのだった。


◇◇◇◇

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

Prhythmatic 6-1 ※二次創作

また収まりませんでした。

飛ばした時間軸で色々ショートストーリーが書けるような気がしますね(笑)

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投稿日:2021/12/31 20:04:11

文字数:1,446文字

カテゴリ:小説

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