エデンの葉は枯れてしまったね 実りに霜が降りた
切られた枝が寒そうに泣いている
氷の太陽の烈(はげ)しい日差しが翳ったら
お別れだ、城門を越えて

『陽ガ昇レバ関ヲ敲(たた)キ 故人無キ東ヘ向カフ』

折れた柳の枝が帰り道を阻んで
狼の叫びももう届かない
鴻鵠の羽だけがまだ僕を僕たらしめる
すまないね、一人だけ早く醒めてしまって

コザックもドンを越え旅立つ九月、朔月をクラレットで染めて
忍耐の果の雫に酔う葡萄月、革命歴の栄光に僕はいない
名も秋霜に散り枯れる、悲しき宿命(さだめ)と憐れむなら
僕の眠る暗い荒野の空に 星を飾ってくれないか


桜も薔薇も雪の下 春はまだ遠いな
凍りつく鐘が寂しい音を立てる
かりそめの白夜に背中を押し出され
今まさに、帝都を出る

『此方(こちら)ノ風ハ涼シ 蘇州ノ君モ風邪ナドヒカヌヨウ』

爛熟した怒りの果実が潰れて
皆がその味に酔ったこの時代(とき)を
やがては過渡期の狂乱と人は言うだろう
勘違いしないでくれ、君は狂っていない

新世代の勇士が望んだ泰平の秋 玉杯は闇に砕け散る
若枝は鉄鎖のくびきから放られて 自由だけがそこに残るだろう
胡蝶の夢と消えぬよう、僕が消えてそれを守るよ
たとえ露の涙こぼれても、それがいつか花に変わるよう


見送りはいらない、君も忙しいだろう
これからは二人、別々の道を往く
春宵一刻値千金、少年老い易く志成り難し
君も僕も道半ば、あの杯の味を覚えているならば
国が靖んずるその時に会おう

さようなら、僕らの夢
さようなら、僕らの舞台
さようなら、実りの季節

さようなら・・・

『都ノ外ノ闇ハ深ク 星ガ殊更ニ美シイ』


繚乱の春と結実の秋が過ぎて 子(ね)の星は東へと傾く
憂国の志士となる誉れを捨て 矢来(やらい)の盾と気取ってみるよ
陽が眠る関を出づれば もうそこは孤独の夢の跡
いつかあの地で共に笑うため 今は少しだけ泣かせておくれ

さらばまほろばよ神居の桜花の園よ 僕は一人キエフへ行きます
たとえこの身石と成り果てても 祖国を守る岩壁となる
花は盛り、月は隈なき いつかまた荒城に灯(ひかり)あれ
もし僕の企みが結ばれたら 泣かずに褒めてくれないか


葡萄の美酒夜光の杯 酔うた思い出も馬鹿に懐かし
飲めと催(うなが)す琵琶の音 人生の愉楽はとうに味わった
一人関を出て酔夢を守り 沙上に伏して涙枯れれば
古来征戦幾人か還ると 問うた君の為きっと帰ってくる

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

ヴァンデミエールにさよなら

―――――盟友との別れ。
君の夢を叶えるため、僕はゆく。

「水晶月夜」に続く「革命」第七弾。今度はいつも側で戦ってきた親友との別れです。
王翰の「涼州詩」を下敷きに、なんというか、「革命団存続のため、謀反の罪をかぶって流刑地に行く」友人を想像して書きました。

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投稿日:2013/07/28 22:30:45

文字数:1,030文字

カテゴリ:歌詞

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