霧に包まれた街に、銃声が響いていた。
 数メートル先すらも覆い隠す、悪い濃霧が立ち込める戦場。
 少年の声を聞いたのは、偶然だったのだろうか……。
「……ハ……ッグ」
 吐き出された虫の息が、濃霧にかき消される。苦しそうに胸を上下させて、空へ手を伸ばしている。
「……大、丈夫?」
 駆け寄って、安否を伺う。立ち上がれるのならいいのだけど。
 ……差し出した手を握られることは無かった。少年の手は、ひたすら空を捜している。
「ハ……ア……」
 血のニオイ。絞り出された声は声ではなく、終わりが近いことを語るような吐息。
 ああ、大丈夫なわけがない。少年の背に接した地面には、血のりが溢れているではないか。
「……誰かに、伝えたいことはある?」
 どうして。どうしてこんなにも冷静なのだろう。
 目の前にある光景を、自然なものだとでも思っているのだろうか。
「……ゴフ……ア……」
 何かを必死に伝えようとする彼の声が、血となって吐き出された。
「…………」
 どうしようもない。この身には、どうにもできない。
 それが悔しくて、奥歯を強く噛み締めた。
「……すく……て……」
 それは――

 すくって……

 ――。
 空をさまよう少年の手が、携行していたのであろう武器を取り出す。
 銃。大まかな分類で言うところの、ライフルというもの。
「……まさか……キミは……」
 虚ろな少年の瞳が、こちらを向いた。

 大粒の涙を浮かべて、しかし彼は微笑んでいた。

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戦場への入り口

交差×戦場にて、CULさんの持っているライフルの出所です。

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投稿日:2012/09/04 12:56:15

文字数:630文字

カテゴリ:小説

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