蒼い魔女が微笑んだ。彼女の手招きを目にした瞬間、そんな風に見えた。
四肢に装着した拳銃。流れる青い髪。妖艶な微笑み。
苦音シク・・・・・・。
数百の銃口を向けられようとも、そんな威風堂々たる姿を崩さない彼女の態度に、俺は一瞬、体を縛られたような感覚に陥った。
「デル!おい!!」
背後からタイトに声を掛けられ、我に返った。
「ここはシクが敵をひきつけている。この隙に施設に入る道を探すぞ。」
「分かった。」
「行きましょう。」
俺はタイト、ヤミと共に施設に潜入すべく走り出した。
何か、何か扉の類は・・・・・・。
だが、走り出す俺達の前に巨大な影が舞い降り、道を阻んだ。
二足歩行型のABLだ。
「邪魔だァ!!」
俺とタイトの銃撃がABLに浴びせかけられたが、強固な装甲に全て無効化されてしまう。
「下がって!!」
ヤミが叫び、そのABLに向け巨大な鎌を振り上げた。
刃が反射させる太陽の閃光が一瞬、視界にホワイトアウトを起こし、次の瞬間にはABLの姿は縦二つに寸断されていた。
だがそれもつかの間、更に多くのABLが俺達の周囲を取り囲み、機銃が俺達に照準を定めた。
「はッ!!」
突然ヤミが空中高く飛翔し、全身を回転させ、ABLの群れへと巨大な鎌を投げつけた。
まるでブーメランの如く、俺達を囲む形で鎌が敵を切り裂いていく。
目に映る全ての敵を真っ二つに両断した鎌は、元通りヤミの手に収められた。
何てことだ・・・・・・。
今までアドバイザーとして、ただ無線の向こう側で装備の説明やPLGの操作をしているだけのものかと思った。
こんな戦闘能力があるとは・・・・・・。
「これで全部か?」
「はい・・・・・・でも、まだシクが。」
彼女のいる場所に目を向けると、彼女は、踊っていた。
「ハッ!!ヤァッ!!」
そう。ダンスだ。
華麗なステップと大胆な身のこなしにあわせて、四肢の銃が火を吹き群がる敵を殲滅していく。
地上を豹のように駆ければ、花火のようにばら撒かれる弾丸がアンドロイドたちをただの破片に変え、ナイフを装備した敵の群れに埋もれたかと思えば、彼女の姿は高く舞い上がり、独楽のように回転をつけ、両足の銃から弾丸の雨を降らせた。
「ホーーーウッ!」
繰り出される格闘術。ばら撒かれる弾丸。
そう。見るもの全てに絶対的な破壊と死を与える、ダンスだ。
「デル。ここはシクと俺達に任せろ・・・・・・恐らくあれがゲートだ。」
タイトが指さす先には、重厚な鉄のシャッターがある。
だが、どうすればあの鉄の扉をこじ開けられるだろうか。
「みんな!伏せて!!」
シクの叫ぶ声が聞こえ、俺達は反射的に身を伏せた。
一瞬、上空を無数の閃光が駆け抜けたかと思うと、あの鉄のシャッターが大きく陥没し、中央から破られた。
「デルさん!行って下さい!!」
俺は彼女の声に頷くと、一直線にゲート向けて走り出した。
背後から、弾丸が浴びせかけられるが俺は痛みに構わず走り続けた。
「ハァーッ!!!」
ナイフで切りかかろうとするアンドロイドは、シクの銃弾で粉々にされる。
「デル!!早く!!!」
「ああ!!」
俺はゲート近くまで来た瞬間、大きくその中に飛び込んだ。
数メートル落下した後、腕と膝による四点着地を決めると、誰かがミサイルでも撃ち込んだのか背後のシャッターがゲートごと爆発し、崩れ去った。
・・・・・・タイト。ヤミ。シク。後は任せた。すまない。
俺は無線で博士を呼び出した。
「網走博士。聞こえるか。」
『聞こえるよ。何とか施設内に潜入できたみたいだね。』
「ああ。でも、タイトとヤミとシクの三人が・・・・・・。」
『みんなのことなら、きっと大丈夫。』
「博士。ワラとミクの二人はどこにいる?」
『君達とは少し離れた場所に降下したようだ。既に施設内に潜入して、敵勢力の無力化に当たってる。』
「そうか・・・・・・。」
『デルさん。聞こえますか。』
博士の声から、急にセリカの声に変わった。
「セリカ?なんだ。」
『施設内はかなり広大で、PLGも使えないんです。でもそこからならシステムを作動させているコンピュータールームまで、兵器廠をはさんで一直線です。レーダーを見ても、ややこしい枝道はありません。ラッキーでしたね。』
「全くだな。」
『もちろん敵は厳しい警戒態勢を敷いているでしょう。見つからないように・・・・・・気をつけて。』
「分かってるさ。」
『レーダーの切り替えや特定場所のスキャンはわたしに任せてください。』
『僕は順次情報を伝える。』
『おっと、俺を忘れちゃ困るね。』
「クロギンか。何だ。」
『俺は武器装備の説明だ。敵のことに関しても詳しい。何かあったらなんでも聞いてくれ。』
「ああ。」
『それじゃデル君・・・・・・気をつけて。』
「任せてくれ。」
俺は三人に短く返事をすると、無線を切り、四肢からハンドガンを抜いた。
さて、では行くとするか。
最後のケリをつけに・・・・・・。
俺は銃を構え、蛍光灯で照らされた通路を進み始めた。
背後では、最後の銃声が消えたところだった・・・・・・。
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