<Run! Run! Run! ボカロット猛レース! 第4話 ミクの正体>

(主催者側詰問室)

 パイロットのミクとメカニック代表のミクオは、今回の一連の事件の関係者と見なされ、主催者側の詰問室に連れてこられたのだった。

フナ・コーシー(以下、コーシー):私が警視庁捜査課の刑事で、今回の事件の担当を任された“コーシー”だ。これから君たちを今回の事件の“ナガネギーコーポレーション”側の関係者として、取り調べを行う。いいね?
ミクオ:ここ、詰問室でしょ? 詰問って、“厳しく問いただす事”って認知していますが?
コーシー:ここにはこの部屋しか無かった事と、君たちを連れてくるため、便宜上、“詰問”、の言葉を使っただけだ。まだ“君たちがやった”という確たる証拠がない以上、詰問までは出来ないからね。とにかく、取り調べをさせてもらう
ミク:・・・
コーシー:まず、今回起こった事件は、事故と処理された昨月の“サクーシャカンパニーピット爆発事故”と、今回の“レーシングチーム・VYボカロット事件“の2つ。同じレースで2件もこういう事が起こったとなると、ピット爆破事故も、事故と単に解決させるわけにはいかん。但し君たちに問いただす用件は、後者だけだ。前者は既に事情聴取済みだからな
ミクオ:一応、取り調べされる前に言っておきたいんですが、僕たちのピットやボカロットの調査はちゃんとされたんですか?
コーシー:現在進行形だ。ここでの取り調べで、調査ターゲットが出てくれば、追加で調査する事になっている
ミク:・・・
コーシー:さて。まずは事件のあらましだが、今回のレーシングチーム・VYのボカロットが君たちのボカロットと接触し、なんらかのコンタクトがされた後、被害者のボカロットが自由になり、その後炎上し、なんとかパイロット二名は助かったが重傷、ボカロットは大破。君たちとこのチームが両方棄権扱いになったことだ
ミクオ:まったく、とんだとばっちりですよ
コーシー:それはこちらが判断することだ。なにせ、この事故で炎上前に接触しているのは、ミクさんとそのボカロットだけだからな。レース前のピットでの検査では、全く問題無いというデータを貰っている
ミクオ:こっちだって、自分のボカロットに細工していない事は、レース前のレギュレーションチェックでわかっているし、そのデータも刑事さんは知っているんでしょ?
コーシー:無論知っている。だから先ほど述べたとおり、“確たる証拠がまだない”から、取り調べ程度に留めているのだ。あったら、この部屋の名前の通り、“詰問”、を行っている!
ミクオ:取り調べ所か、簡単な“事情徴収”で終わるレベルだと思いますが?
コーシー:それがそうはいかない。救急隊員の話では、サクーシャのピット爆破事故の時、それと今回の炎上事故で怪我をした被害者を搬送する際、ミクさんと被害者が何か話していたそうだ。ミクさん、異論はないかね?
ミクオ:ねーちゃん!?

ミク:…ここまで話が進んでしまっているのなら、仕方ない。コーシー刑事、“アペンド”という刑事を覚えているか?
コーシー:な、なんだ、いきなりの上から目線で! それに“警視庁刑事課内部のみ”での情報をなんで君が知っているんだ?
ミク:アペンド刑事を覚えているんだな?
コーシー:当然だ! ある事件の捜査からずっと行方不明になっている敏腕刑事の名前だ!
ミクオ:ある事件?
コーシー:うむ゛~、仕方ない教えるが口外しないでくれ。実は今期のレースが行われるちょっと前に、集団失踪事件が起こったのだ。しかしアペンド刑事の活躍で、失踪ではなく“誘拐”した犯人から聞き出した“誘拐した人物”は全員救助された、と警察では確認したのだが、アペンド刑事は、“犯人一人、失踪者一人が確認されていない”と言い張っていたのだ。メディアには、こちらが確認とれた内容に、アペンド刑事の内容を一部付け加えて発表したのだ。失踪事件、犯人が使っていた異様なボカロット、一応の解決、犯人未だ見つからず。
ミクオ:あー、そういえば、ミクねーちゃんが旅行している間に、そんな事件があったなぁ。うちらもヒヤヒヤしたけど、無事こうやって帰ってきたから安心して、それからレースの調整に入ったんだ

ミク:ミクオ君、すまない
ミクオ:え!?

 ミクがそういうと、ミクの輪郭や体型が変化していき、一人のミクに似た女性が、ミクオの前に現れた

コーシー:!!!!! ア・・・・・・・・・・アペンド刑事!!!!!!
ミクオ:!!!!??????

 しかし、アペンド刑事はすぐにミクの姿に戻ってしまった。そして全員小声で喋るように伝えた。

ミク:二人ともすまない。“この事”がこのレースの誰かに伝わってしまったら、君たちだけでなくミクの関係者全員の命の危険性が生じる。すまないけど“ミク”で通させてください
コーシー:わ、わかりました
ミクオ:ほ…本物のねーちゃんは…
ミク:本物の“初音ミク”さんは、旅行中に、まだ捕まっていない“残り一人の犯人”に誘拐されて、まだ消息不明なのだ
ミクオ:ね、ねーちゃん…
ミク:何せ私も完全にミクさんに変身して生活する事ができなくて、ミクオ君も少し違和感があったと思う。とにかくミクさんの行方はその残り一人の犯人だけが知っているはずだ
コーシー:し、しかし、それなら、警視庁で捜査すれば…
ミク:そうはいかなかったんだ。こちらで付けたコードネーム以外、犯人の正体がわからず、やたらに捜査の手を広げた場合、最悪、ミクさんの命が危なかった。だから、私がミクさんの情報を元に、変身装置で変身し、犯人には“ミクが二人いる”ように見せてきた。そうすればやたらにミクに危害を加える事をしないと考えたからだ。
コーシー:アペンド刑事…
ミク:そしてその肝心の残り一人の犯人だが、犯人集団が使っていたのが“やたら性能のいい異様なボカロット”である事から、レースに関係しているだろう、と判断し、たまたまだったが、ミクさんの企業での“レースへの参加”を押し進め、レースで探りを入れて捕まえるつもりだったんだ
コーシー:なるほど。まず“サクーシャカンパニーの異様なボカロット”に目星をつけて、開幕戦でコンタクトをとったが、逆に“他にいる本物の犯人”に知られて、あの事件を知った人物として、サクーシャは重傷を負ってしまった。2戦目でコンタクトをとったVYチームも、何らかの装置で傍受され、コンタクトを取った事がばれて、VYチームの二人も重傷
ミク:そう、うかつだった。まさかパイロット専用無線まで傍受できるとは思ってなかった
ミクオ:こ、このレースで怪しいヤツの目星は、もう付いたんですか?
ミク:いや。相手も変装しているらしい。ピット爆破“事件”も捜査があったのに、怪しい装置が見つかってない。VYの事件も未だわからず。正直、困っている。相手は私が怪しいと思っているのかも知れないが、二人のミクの事があるから、私を直接攻撃できないでいる。おそらくこの2つの事件は、犯人が自分を追っているだろう“アペンド”への警告なのだと思う
コーシー:…レース、中止するべきか?
ミク:いや、そうなったら、もう犯人を捕まえて、ミクさんを救助する手だてが無くなってしまいます。
ミクオ:じゃぁ、どうすれば!
ミク:…1つだけ案があります。相手が引っかかるところまでいけば、特定できます。

 ミクはミクオとコーシーを集めて、その案を耳打ちした。

ミクオ:な、なるほど。それなら行けそうだけど、ミ・・アペンドさん、十分気を付けて下さいね
ミク:心得ています。コーシー刑事、1チームのピットに必ず、あの事件に関係ない警官を付けて見晴らして下さいね
コーシー:うむ。とにかく気を付けてくれ

こうして、アペンド刑事だったミクの案で、次のレースの“仕様”が決まったようだった。コーシー刑事からの連絡で、レース関係者が集められ、その“案”が実行されることになった。

***

(コース内 集合場所)

 ガヤガヤガヤ・・・

コーシー:えーー、私は今回の事件の担当をしています、本庁刑事のコーシーです。開幕戦の事故と今回の繋がりも考慮し、レース関係者に相談した結果、今期のレースは、次を最終レースとする事にしました

 ざわ・・・・ざわ・・・・

???:(なんだと!)

コーシー:更に、パイロットを含め関係者の安全も考慮し、次は正規の最終レースが行われる、東京都のネオアキバサイバーシティレース場に変更し、日付も今より1週間後とします。非常にタイトなスケジュールとなりますが、ご協力、お願いいたします。詳しい内容に関しては、レース当日にレース関係者に説明させます。では、お疲れさまでした

ミク:(かかってくれればいいが…)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

Run! Run! Run! ボカロット猛レース! 第4話 ミクの正体

☆オリジナル作品第14弾である、「Run! Run! Run! ボカロット猛レース!」の第4話です。

☆なんか、おかしな話と、驚愕の事実と、そして、シナリオの核が始まりました!

*****

hata_hata様が、第1作目のきのこ研究所のイメージイラストを描いて下さいました!。まことに有り難う御座います!。
『「却下します!」』:http://piapro.jp/content/oqe6g94mutfez8ct

☆hata_hata様が、第2作目のきのこ商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『causality』:http://piapro.jp/content/c0ylmw2ir06mbhc5

☆nonta様も、同じく商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『ようこそ!、きのこ駅前商店街へ!』:http://piapro.jp/content/dmwg3okh7vq1j8i1

☆あず×ゆず様が、第8作目の部室棟の死神案内娘“テト”を描いて下さいました!。本当に有り難うございます!。
『おいでませ!木之子大学・部室棟へ♪』:http://piapro.jp/content/rsmdr1c3rflgw7hf

閲覧数:231

投稿日:2011/05/16 20:31:35

文字数:3,617文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

  • 関連動画0

  • tamaonion

    tamaonion

    ご意見・ご感想

    今晩は。読ませていただきました。

    レース活劇ものかな?と読み進めていくうち、それと重なって別のテーマが姿を現してくる展開。
    面白いですね!

    ある状況を描きつつ、それと重なりながら(または、連携しながら?)大きな世界が動いていく話は、enarinさんならではの楽しさがあると思います。

    以前観たアメリカのプロ野球の試合を舞台にした映画で、それと並行して球団のオーナーたちが陰謀を展開しつつ、内容が多重に進むものがありました。
    それに似た楽しさがあります。

    レースも楽しめるし、謎解きも楽しめる、いろんな角度で読み進めさせていただきます!

    それでは、また。

    2012/09/17 20:31:27

    • enarin

      enarin

      tamaonion様、今晩は!

      > それと重なって別のテーマが姿を現してくる展開。面白いですね!

      有り難うございます! はい、ある意味、ここで1つのターニングポイントがやってきます。ミクさんのセリフは実は1話からちょっと違っていたんですね。それがここで伏線回収となります。単なる1つのお話では終わらないのが、私のシリーズにほぼ共通していることです。逆に1つのシナリオを掘り下げていくのは、ちょっと苦手でもあります

      > ある状況を描きつつ、それと重なりながら(または、連携しながら?)大きな世界が動いていく話

      有り難うございます! はい、レースの流れがあるのに、それと平行して、もっと重要なシナリオが動いてきます。そしてどこかでくっついて、種明かしされます。ここからはちょっと違った路線となります。

      > 内容が多重に進むものがありました。それに似た楽しさがあります

      そういえばありましたね。ちょっとタイトルを思い出せないので、すみません。野球というプラットフォームを使うのが、結構珍しかったです。あ、そういえば、サッカーとか野球とかスポーツに絡めた作品は書いたことがないけど、そのスポーツに造詣が深くないと、続けられないので、やめよっと

      > レースも楽しめるし、謎解きも楽しめる、いろんな角度で読み進めさせていただきます!

      有り難うございます! はい、ボカロットレースというベースで楽しむのと同時に、もっと大きなシナリオでの謎解きもあります。このミクさんの謎は、実はこれだけではない・・・かも。

      このたびのご閲読、コメント、まことに有り難うございます!

      2012/09/18 17:08:06

  • ayuu

    ayuu

    ご意見・ご感想

    こんばんは♪ayuuです^^
    一気に拝読させていただきました~

    ええええええ!ミクの正体がアペンド刑事!? まさかミクが別人だったとは……!!
    どうりで何かヘンだったのか、と納得です。
    アペンドでかの作戦がすごいです!相手の先の先を読むって感じで……。 
    ホンモノのミクさんはどうなってしまうんでしょうか>< 

    次もわくてかしながら待ってます!(≧ω≦)

    2011/05/27 19:55:06

    • enarin

      enarin

      ayuu様、こんにちは! 梅雨入りなので雨降りですね?

      > 一気に拝読させていただきました?

      ありがとうございます!! 今回はある意味、ターニングポイント、転機ですね。

      > ええええええ!ミクの正体がアペンド刑事!? まさかミクが別人だったとは……!!

      はい。アペンド刑事とミクさんは、ここでは別人の設定です。今回、犯人に悟られないために、すぐには名前を”アペンド刑事”としませんでした。追っかける事になったので、それ以降はアペンド刑事となりました。未来の設定なので、アペンド刑事がミクさんの姿に完璧に変装できる技術はあることになってます。

      > どうりで何かヘンだったのか、と納得です

      仕草、会話までは完璧にトレース出来なかったので、ミクオとの会話がちょっとおかしかったのですね。

      > アペンドでかの作戦がすごいです!相手の先の先を読むって感じで……

      確かに大胆な捜査だと思います。でも、ある意味、怖い一面もあります。犯人は確かに二人のミクがいれば、自分の所にいるミクに手出しは出せませんが、ミクになっているアペンド刑事にもかなりの危険が迫る事もありますから。

      > ホンモノのミクさんはどうなってしまうんでしょうか>< 

      今回の最大の謎は、”ミク”が何故、こんな長期間、犯人の所にいることになっているか、です。本物のミクの思惑は…

      > 次もわくてかしながら待ってます!(≧ω≦)

      今、頑張って書いてます?♪ チェイス物になると思います。猛レースの2つ目の意味は、このチェイスということになります。

      このたびのご閲読、コメント、有り難うございます!

      2011/05/28 14:40:08

オススメ作品

クリップボードにコピーしました